研究課題/領域番号 |
15K07753
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
北川 勝人 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50409067)
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研究分担者 |
杉谷 博士 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20050114)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳脊髄液循環 / Time-SLIP法 / 水頭症 / 脊髄空洞症 |
研究実績の概要 |
日本大学動物病院に神経疾患として来院し、MRI撮影を行う症例に対してTime-SLIP撮影を、脳脊髄液(cerebrospinal fluid以下CSFとする)循環障害を起こしやすいモンロー孔、中脳水道、橋前槽、第四脳室出口(頭蓋頸部接合部)として頸部腹側、頸部背側部に行い、主観的に描出の程度を検討した。撮影部位のモンロー孔以外の撮影部位については、脳脊髄液の流れを描出できた。しかし動物の大きさや種類の違いにより各撮影部の描出の程度が不安定だった。このため最適な撮影条件と描出された流れの判定基準の改定を行った。描出された脳脊髄液の流れの判定基準を、主観的に “良く動く”、“わずかに動く”、“動かない“の3段階に分類した。撮影を行った症例の中で、脳脊髄液循環異常を病態としている水頭症、脊髄空洞症、これら疾患の併発症、さらにコントロール群として特発性てんかん症例における、過去に撮影した症例と合わせた計48頭についてのデータを得た。48頭の症例の内訳は、特発性てんかん24頭、脊髄空洞症13頭、水頭症8頭、水頭症と脊髄空洞症の合併症例3頭であった。判定は、上記のように主観的に脳脊髄液の流れを“良く動く”、“わずかに動く”、“動かない“の3段階に分類して判断した。コントロール群では、多くの症例の各部位で“良く動く”と判断されたが、脊髄空洞症では頸部腹側、水頭症と水頭症・脊髄空洞症の合併症では橋前槽での流れが悪いという結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、各神経疾患における脳脊髄液循環動態の変化をMRIのTime-SLIP法で観察し、頭蓋内圧、脳脊髄液中のアクアポリンとTAUタンパク濃度を測定し脳脊髄液循環動態の変化との関連を調査することである。27年度は神経疾患症例のTime-SLIP撮影データは収集ができ、一部解析している。しかし、脳脊髄液循環経路を考慮した撮影部位において、Time-SLIP撮影法で安定した描出をするための撮影条件を作成に時間がかかり、データ解析が遅くなっている。脳脊髄液内アクアポリン濃度ならびにTAUタンパク濃度の測定は、脳脊髄液採取ができた症例が少ないため測定できなかった。頭蓋内圧の測定は、対象が脳腫瘍に対する外科手術を行う症例に対して行うが、数例のデータは収集できているが、解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き脳脊髄液経路における描出できていない部位を、描出できるように撮影手技を改善し、来院した症例に対してTime-SLIP撮影を行い、データを集積する。また、同時にMRIで得られた、浮腫や脳腫瘍などの病変部の変化をデータ化し、得られたTime-SLI法で得られたデータとの関連性についての解析を行う。脳腫瘍摘出症例におけるICP値とTime-SLIP法における脳脊髄液循環動態の変化との関連について解析する。平成27年度に集積した脳脊髄液におけるAquaporinを測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
犬の神経疾患における脳脊髄液動態の異常を調査するためにMRIの撮影方の一つであるTime-SLIP法を中心に脳脊髄液中のAquaporinとTauタンパク濃度ならびに脳腫瘍症例におけるICPの変化との関連を分析する予定である。27年度は画像データ収集は順調に進んでいるが、脳脊髄液採取が可能な神経疾患症例が少なかった。AquaporinとTauタンパク濃度の測定が進まなかったため測定実験材料や器機の購入が予定より少なかったことにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
水頭症や空洞症など器質的変化がある症例の脳脊髄液採取を計画したが、症例が少なく、脳脊髄液中のAquaporinとTauタンパク濃度を測定する事ができなかったため、器質的異常がある神経疾患症例だけでは無く、正常脳だが、脳脊髄液循環に異常がみられる症例も対象として、脳脊髄液採取を行いAquaporinとTauタンパク濃度を測定する。これら測定のための試薬や消耗品を購入する予定である。
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