研究実績の概要 |
獣医療領域において、イヌやネコ等の伴侶動物と永く幸福に添い遂げるためには転移や再発を伴う難治性固形がんの克服が喫緊の課題である。申請者は日本発の新規がん治療遺伝子候補REIC/Dkk-3の獣医療への導入を模索してきた。その過程で、ヒト男性が罹患するがん種の中で、治療が困難とされ、なおかつ、イヌでの予後が非常に悪い前立腺がん細胞においてREIC/Dkk-3が予後決定因子であるアンドロゲン受容体(AR)の成熟機構に密接に関与している可能性を発見した。イヌ前立腺がんでは多くがAR発現低下によるホルモン療法抵抗性であり、ヒトの難治性ホルモン療法抵抗性前立腺がん病態と類似性が高いため、本研究ではREIC/Dkk-3とその相互作用分子が形成する複合体の動態を解析し、イヌの前立腺がんにおけるAR成熟メカニズム制御機構を明らかにすることを目的とした。 研究最終年度の平成29年度においては本申請課題の研究成果としてイヌ前立腺がん由来株化細胞を樹立し、その性状について解析を行った。また、イヌのREIC/Dkk-3とコシャペロンタンパク質であるSGTAとの相互作用がARシグナリングにおよぼす影響について精査し、Kato et al., BMC Vet Res 2017, 13:170(研究代表者落合が責任著者)に発表した。。さらに、イヌと並んで飼育頭数が多いネコのREIC/Dkk-3ホモログについてもその抗腫瘍作用について検証しOchiai et al., Veterinary and Comparative Oncology, 15(4) 1181-1186に発表した。
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