研究課題
H28年度は経口接種において免疫系に認識されるOVA(オボアルブミン)量を検討するため、3週間にわたってOVAタンパクと乳酸菌を経口投与後、OVAとアラム・アジュバントのマウスの腹くう内投与を2回行って有効なOVA量の検討を行った。経口投与したOVA量は1μgから 10mgであった。最終的なOVAとアラム・アジュバントの腹くう内投与1週間後にマウスから採血を行い、OVA特異的IgEの測定をELISA法で行った。OVA特異的IgEの抑制効果は用量依存的な抑制が見られ、10μgのOVA経口投与した群でもOVA特異的IgE抗体の抑制が認められた。この結果によって、OVA発現乳酸菌ワクチンにおいて、10μg以上のOVAの含有量が必要と考えられた。また、H28年度は食物アレルギーを示す82頭のイヌにおけるOVAに対するIgE抗体の反応性をELISA法を用いて検討した。最初に一般的な食物アレルゲンである卵白の粗抗原に対するIgE抗体を測定したところ、82頭中8頭(9.8%)が陽性を示した。さらにこの粗抗原に対するIgE陽性の8頭においてOVA特異的IgE抗体が存在するか調べたところ、8頭中6頭(75.0%)はOVAに陽性を示した。上記のELISA法で得られた結果の検証のため、ウェスタンブロット法を行った。ウェスタンブロットにおいてもOVA特異的IgE抗体が検出された。この結果によって、OVAがイヌの主要な卵白精製抗原だということが示唆された。
3: やや遅れている
H28年度において経口接種において免疫系に認識されるOVA(オボアルブミン)量を検討するため、OVAタンパクと乳酸菌を経口投与後、OVAとアラム・アジュバントのマウスの腹くう内投与を有効なOVA量の検討を行った。この結果によって、OVA発現乳酸菌ワクチンにおいて、10μg以上のOVAの含有量が必要と考えられた。現在、OVA発現乳酸菌ワクチン中に含まれるOVA量はngレベルでμgレベルには達していない。また、OVA発現乳酸菌ワクチンを自然発症の食物アレルギー犬に臨床応用を検討するための基礎的検討としてアレルギー犬の血清中のOVA特異IgE抗体の測定を行った。食物アレルギー犬82頭中8頭でOVA特異IgE抗体が検出された。今後、これらの自然発症の食物アレルギー犬での研究の可能性が開かれた
H29年度では1回の投与量で10μg以上のOVA発現量を目安にOVA産生遺伝子組換え乳酸菌の作製をやり直す予定である。さらに並行して大腸菌でOVA組み換え体を作製してそのOVAを乳酸菌の表面に結合させるOVA結合乳酸菌ワクチンの作製も併せて行う予定である。この方法であれば、十分量(10μg以上)のOVAを乳酸菌に結合させたワクチンが比較的簡単に作製できると考えられる。また、本研究において、初めて自然発症の食物アレルギー犬においてOVAがアレルゲンになっていることが明らかになった。OVAと乳酸菌を組み合わせた食物アレルギーワクチンにおける臨床応用に可能性も開かれた。本年度もさらに食物アレルギー犬におけるOVAの反応性を詳しく解析する予定である。
本年度は十分な試薬・消耗品を購入して年度内でも十分に使用可能であることがわかった。また、次年度(110万円)は本年度(150万円)に比べ、大幅に研究予算が減少するため、次年度に向けて試薬・消耗品が十分に購入できるように予算の繰り延べを希望します。
繰り延べした24739円は次年度の研究代表者である阪口の試薬・消耗品費(40万円予定)と合わせてに試薬・消耗品費に使用する予定である。
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