研究実績の概要 |
犬血清を用いて、牛血清アルブミン(BSA)、犬血清アルブミン(CSA)、炭酸脱水酵素アイソザイムのCA-IとCA-IIに対するIgG抗体をELISA法で測定した。直線性試験の結果、犬血清は100倍希釈して測定した。健康犬として1ヶ月齢,3ヶ月齢,6ヶ月齢,12ヶ月齢,24ヶ月齢のビーグル(25頭)の血清を用いた。さらに、無症状の犬(17頭),アトピー性皮膚疾患(15頭),下痢・嘔吐(8頭),糖尿病・膵炎(7頭),腎疾患(6頭),肝疾患(9頭),甲状腺疾患(10頭)を用いた。3ヶ月齢のビーグルでは、BSAに対する抗体価が高値を示した。これは、接種したワクチンに含まれる牛胎児血清のBSAによる影響であった。ビーグルの測定値からカットオフ値を算出し、疾患犬の値と比較した。その結果、CA-I、CA-II、BSA、CSAに対する抗体価のそれぞれのカットオフ値以上を示した陽性率は、肝疾患の犬ではそれぞれ、67%,78%,44%,22%であった。甲状腺疾患ではそれぞれ、40,10%,10%,20%であった。下痢・嘔吐の犬では、それぞれ、38%,25%,13%,13%であった。無症状の犬では、35%, 41%, 29%,18%であった。糖尿病・膵炎では、それぞれ29%,43%,29%,14%であった。腎疾患では、それぞれ17%,17%,0%,33%であった。アトピー性皮膚疾患では、それぞれ0%,27%,7%,13%であった。CA-IとCA-IIには正の相関があり、CA-IIとBSAにも正の相関があった。 BSAに対するIgG抗体価の上昇は食事性アレルギーを発症する可能性は高いが、どのような症状かは犬では不明である。CAは動物種が異なっても共通抗原性が高く、CAに対する抗体は自己免疫疾患を引き起こす可能性が高いことが考えられる。遅延型食事性アレルギーの診断は犬の健康管理に重要な検査と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
各種疾患のある犬と猫の血清をさらに収集する。BSA,CSA, CA-I,CA-IIに対するIgG1, IgG2, IgA, IgM, IgEをELISA法で測定する。さらに、筋肉型CAアイソザイムであるCA-IIIに対する抗体価の測定を行う。これらの測定により、IgG遅延型フードアレルギーの出現率を検索する。 CAアイソザイムがIgG遅延型フードアレルギーの原因物質となるかを確認するために、ペットフォード中で抗原性が保持されているか検索する。 CAアイソザイムに対する抗体をラットに注射し、筋肉運動、消化管運動への抗体の影響を観察する。
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