研究実績の概要 |
犬と猫の血清中にCAアイソザイムに対する抗体が上昇している個体を発見した。これらの個体は、ペットフード中にCAアイソザイムの抗原性が存在することから、抗体上昇は食事性アレルギーと考えた。ほ乳類のCAアイソザイムは共通抗原性が強いことから、CAアイソザイムに対するIgG抗体は自己免疫疾患様の危険性を示唆した。 CA-IIIに対するIgG抗体2mgをラットに筋注して、ラットの筋力に与える影響を観察した結果、筋力には影響を及ぼさなかった。しかし、IgGを投与したラットの筋肉の重量の発育に影響を及ぼした。CAは亜鉛酵素であるため、筋肉の成長にはCAが重要であることが示唆された。したがって、CAに対する抗体の上昇は、筋肉の発育に影響を及ぼすことが示唆された。 炭酸脱水酵素アイソザイム(CA-I,CA-II)に対するIgG抗体の上昇が生体に及ぼす影響を明らかにするために次の実験を行った。CAに対するウサギIgG抗体5mgをラットに筋注した。対照実験として正常ウサギIgG5mgを筋注した。投与後21日目に全採血をして、腎臓の病理標本を作製した。 血液の検査の結果、CAIgG抗体の投与により高値を示したのは、BUN, IP, Na, Cl, ALT, LDH, AMY, TG,T-CHO,HDL-Cであった。唾液腺にはCAアイソザイムが存在するため、血清中のAMYの上昇は唾液腺の障害と考える。腎疾患マーカーの、対称性ジメチルアルギニン(SDMA),シスタチンC,クラスタリン,αGST, Kidney injury molecule-1(KIM-1), β2マイクログロブリン, L-FABPを測定した結果、クラスタリン、αGST, kIM-1が血漿中に有意に上昇した。 病理検査の結果、CA-I,CA-IIに対するIgG抗体を投与したラットの近位尿細管には軽度から中度の変性壊死が認められた。
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