研究課題/領域番号 |
15K07771
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
加藤 たか子 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員(共同研究員) (90445859)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / 内分泌学 / 生殖 / 細胞・組織 / 血管形成 / 分化 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
表記課題を達成するための平成28年度の期間で、下記のような実験を進めて、成果をあげた。 研究課題にある転写因子PROP1は下垂体組織に特異的であり、もう一方のPRRXs(PRRX1とPRRX2)は、胎児期に下垂体に侵入する間葉系細胞で発現する因子であると同時に、胎児期と生後の下垂体幹・前駆細胞で発現する因子である。これまでに実験で、これらの因子が下垂体の発生と分化に深く関わることを明らかにしているが、平成28年度の主要な成果の概要を下記に述べる。 1.下垂体には2様の幹・前駆細胞が局在する事を報告している。この2様の幹・前駆細胞の特性を明らかにするために、2種のプロテアーゼを使って段階的に酵素処理を行い細胞分散した。この処理によっても塊状に残る細胞集団を集め、幹細胞マーカーSOX2で染色したところ全ての細胞が陽性であることを発見した。また、その多くがPROP1陽性である事も確認した。分化をせずに培養出来る事や、各種の因子を作用させると分化出来る事をまとめて原著論文を投稿した、2回のやり取りの中で幾つかの実験を追加することで受理された。 2.PROP1遺伝子の発現制御機構について、20種類の因子が制御に関わることを論文発表したが、さらにメチル化によるエピジェネティクス制御を調べ、非発現組織と比べて下垂体では低メチル領域が転写開始点の遠位、近位、第1イントロンの3ヶ所に差異がある事を確認した。論文投稿し、データ表示の修正などのやり取りを行うことで受理された。 3.PRX1とPRX2を発現する細胞の系譜解析(lineage tracing)を開始し、系統の作製と繁殖を進めている。本年度は、ラットの交配が上手くいかずに、再度のトランスジェニックラットの作製実験を行うなど、遅延している 本年度の研究を通じて、複数の研究成果が得られたが、トランスジェニックラットの作製実験では期待通りには進まない部分もあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.下垂体幹・前駆細胞の培養と分化誘導のための基本条件に一定の目途が得られた。 2.PROP1遺伝子の発現制御に関わる転写因子の同定やエピジェネティクスで研究成果をまとめる事ができた。 3.PRX1とPRX2の機能解析を追求するための細胞系譜解析(lineage tracing)するためにモデル動物作製では、系統作製と維持に手間取っている。 4.PRX1とPRX2の機能解析に有用なツールとして、両者を発現する株化細胞を同定した。 以上を通じて、研究は概ね予定通りに展開している。
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今後の研究の推進方策 |
1.モデル動物作製を継続的に進める。 2.下垂体幹・前駆細胞の分化誘導系を確立し、分化誘導を行う。 3.PROP1・PRXsの標的遺伝子を特定する。 4.幹・前駆細胞で発現する特異的遺伝子の同定と機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加採択のために、予算の使用の遅れがそのまま残っている。
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次年度使用額の使用計画 |
本年は規模の大きな実験を計画しており、全額を使用する予定である。
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