研究課題
本研究課題では下垂体組織に特異的転写因子PROP1と、胎児期に下垂体に侵入する間葉系細胞で発現する因子である転写因子PRRXs(PRRX1とPRRX2)を中心に研究を展開し、以下の様な成果を得た。1.下垂体には2様の幹・前駆細胞が局在することを報告しているが、昨年度は2種のプロテアーゼを使って分散した細胞集団に塊状に残る幹・前駆細胞を捕集して、その幹・前駆細胞としての特徴を調べて、ホルモン産生細胞にも分化することを確認して論文報告している。本年度では、さらにその細胞塊を2次元培養に変えると、非ホルモン産生細胞である血管内皮細胞に分化する細胞種があることを確認し、論文報告した。2.PROP1遺伝子の発現制御機構について、昨年のエピジェネティクス制御解析に引き続き、下垂体の発生に関わるレチノイン酸による制御の解析を行った。その結果、ラット胎仔期中期にレチノイン酸合成酵素遺伝子が発現すること、レチノイン酸受容体RXRのそれも発現すること、を見出した。さらに、その受容体を介してレチノイン酸依存的にPROP1遺伝子の発現が起こることを確認して、論文報告した。3.以前から行っていた細胞の系譜解析のためのラットの下垂体のPRRX1およびS100β発現細胞の実験について作製した系統では、細胞系譜の解析に必須である蛍光標識細胞が期待した様な蛍光シグナルは得られなかった。さらに、摘出した組織から調製した分散細胞を使っても確認できず、目的を遂行に供せる動物ではないと判断して、明治大学農学部研究報に研究ノートとしてこの経過の記録を残した。4.下垂体由来の株化細胞TtT/GFの分化能を解析し、非ホルモン産生細胞への分化能を確認し、論文報告した。
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