研究実績の概要 |
長寿化に伴い、イヌの( 潜在的)骨疾患は増加傾向にある。破骨細胞は骨吸収の責任細胞なので、破骨細胞の数と機能の制御破綻は骨代謝異常に繋がる。本研究では、イヌ骨髄細胞を破骨細胞に分化させる際にTGF-βが果たす役割、ならびに作用機構を明らかにすることを第一の目的とする。また、イヌ末梢血単核細胞が破骨細胞に分化する方法の確立、ならびに、血中骨代謝関連因子濃度と分化能との関連の明確化を第二の目的とする。これらの解析を通して、イヌ破骨細胞活性化を介した骨疾患惹起に関する基礎的理解が研究全体の目的である。 第一の目的に関わる分子機序を明らかにするため、H27年度に引き続き、イヌ破骨細胞形成過程を促進する各種転写因子(NFATc1, PU.1, AP-1, NFkB)の発現ベクターや破骨細胞分化関連遺伝子(IntgαV, DC-STAMP, CTR, Intgβ3)のプロモーター領域を組み込んだレポーターコンストラクトを新たに作製した。H27年度に作製したプラスミドコンストラクトも利用して、予備的なルシフェラーゼアッセイを実施した。イヌの各種組織由来のRNAを入手し、cDNAを作製して各種遺伝子発現の測定に対応できるようにした。また、第二の目的であるイヌ末梢血単核細胞からの培養を試みた。マクロファージ系細胞の単離と長期間の生存は維持できるものの破骨細胞分化実験に必要な細胞数を増殖させるには至らなかった。凍結保存したイヌ骨髄由来単核細胞ではGM-CSFとIL-4を用いることにより、長期間の培養は必要なものの、十分な増殖細胞数を得ることができた。ウシ末梢血液から増殖培養した単核細胞から確立した方法により、再現性良く破骨細胞へ分化できることを確認した。
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