長寿化に伴い、イヌの(潜在的)骨疾患は増加傾向にある。破骨細胞は骨吸収の責任細胞なので、破骨細胞の数と機能の制御破綻は骨代謝異常に繋がる。本研究では、イヌ骨髄細胞を破骨細胞に分化させる際にTGF-βが果たす役割、ならびに作用機構を明らかにすること、またイヌ末梢血単核細胞が破骨細胞に分化する方法の確立、ならびに、血中骨代謝関連因子濃度と分化能との関連の明確化を目的とする。これらの解析を通して、イヌ破骨細胞活性化を介した骨疾患惹起に関する基礎的理解が研究全体の目的である。 破骨細胞分化において必須のサイトカインであるRANKLは、細胞膜上のRANKと結合すると、その下流でNFκBを活性化してNFATc1の転写活性を誘導する。産生されたNFATc1は他の転写因子と協働して破骨細胞分化関連遺伝子を発現する。そこで、NFκBの構成分子であるイヌのRel A、Rel B、p50、p105のCDS領域を組み込んだ発現系ベクターを構築した。また、RANKの発現系コンストラクトの構築も試みた。RANKL誘導のイヌ破骨細胞分化過程に関与すると推測される、これまでに作製した各種転写因子や細胞内情報伝達因子の発現系ベクター(NFATc1、AP-1、MITFなど)と破骨細胞形成関連遺伝子のプロモーター領域を組込んだコンストラクト(Trapなど)を用いて、MDCK細胞やHela細胞においてレポーターアッセイを行なった。いくつかの組合せで期待する反応は得られたものの、分子機序を解明するには至らなかった。 マウスと同様にイヌ破骨細胞形成過程においてMitf-E isoformの発現誘導が重要であったが、マウスと異なりイヌではTGF-β刺激により破骨細胞形成が抑制された内容を国際雑誌へ論文発表した。 これまでに確立した、ウシ末梢血単核細胞からの破骨細胞形成過程におけるTGF-βの果たす影響を調べている。
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