研究課題/領域番号 |
15K07782
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中村 京子 順天堂大学, 医学部, 助教 (90578858)
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研究分担者 |
濱田 耕造 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (00311358)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カルシウムシグナリング / ムスカリニックアセチルコリン受容体 / 光刺激 / 膵外分泌機能 |
研究実績の概要 |
膵臓の外分泌機構には腺房細胞の細胞内Ca濃度の上昇が大きく関与しており、Ca2+動態の詳細な知見を得ることは、Caシグナリングが膵臓における消化酵素分泌をどのように制御しているかを解明するための重要な手掛かりとなる。申請者らは、膵腺房細胞における酵素分泌に関与しているムスカリニックアセチルコリン受容体(mAChR)のサブタイプ1と3では、それぞれを介したアゴニスト(acetylcholine) 誘発性の細胞内Ca2+動態に顕著な違いがあり、それには各タイプのC末端と細胞内第3ループ領域が関与していること、また発現細胞同定のための赤色蛍光タンパク質をC末端に付加しても同様の結果が得られることを報告してきた。本研究では、mAChRタイプ1および3と、光感受性タンパク質とのキメラ受容体(opto-XR)を作成して培養細胞に発現させ、光刺激による細胞内Ca応答のパターンを制御するためのツールの探索が目的の第一ステップである。そしてそのツールを用いてCa応答パターンと消化酵素分泌との関連を評価する。そのため、まずサブタイプ間のCa応答パターンの違いに関与していると推測される、C末端と細胞内第3ループ領域を光感受性タンパク質の相当領域と置換したキメラ受容体を何種類か作成し、HEK293細胞に発現させて光刺激によるCa2+動態を調べた。現在応答パターン制御までは至っていないが、測定条件検討と並行して、コンストラクトの改変を行って最適なツールを探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポジコンのopto-XRとしてopto-アルファ1-AR (Airan et al.; Nature 2009) のC末端に、現在作成中の受容体に使用しているものと同じ赤色蛍光タンパクを付加して細胞に発現させ、蛍光Ca指示薬を用いて光刺激によるCaイメージングを行ったところ、発現細胞で比較的大きなCa上昇が観察された。細胞への発現も高効率で、測定システムのセットアップはほぼ完了している。しかしCa応答パターンを制御できるまでの最適ツールは構築できていないため、より精度の高いツールを作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより高い精度で光刺激によって細胞内Ca2+応答をパターン制御できるツールを早い段階で構築して、消化酵素の産生・分泌可能な膵臓由来細胞に導入し、Ca2+動態-消化酵素分泌連関の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ツールの探索に予定より時間を費やしてしまい、膵腺房細胞への導入にまで至らなかった。よって計上していた動物代、およびウイルスベクター構築関係の費用が次年度への持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
光刺激によるCaイメージングの測定系はほぼ確立できているので、次年度はより精度の高いツールを用いて、細胞内Ca上昇による酵素分泌を正確に誘導できる条件を早い段階で検討する。そのためのキメラ受容体作成関連に使用し、また得られた結果を学会等で発表するための旅費分も計上する。
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