研究課題/領域番号 |
15K07786
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
相川 順一 国立研究開発法人理化学研究所, 伊藤細胞制御化学研究室, 専任研究員 (10260192)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多能性幹細胞 / ES細胞 / 糖鎖 / ゴルジマンノシダーゼ / レチノイン酸 |
研究実績の概要 |
(目的)本研究課題は再生医療の重要な材料である多能性幹細胞を取り扱う。再生医療には多能性幹細胞が必要である。その上、再生医療のコアは、胚性幹細胞(ES細胞)と人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立、維持である。幹細胞の多能性の維持には、分泌性蛋白質が必要である。幹細胞自身が分泌する内因性の蛋白質の多くは、アスパラギン結合型糖鎖を持つ糖蛋白質である。また、肝細胞表面に局在する、分泌性蛋白質の受容体の多くも糖鎖を持つ糖蛋白質である。本研究課題はアスパラギン結合型糖鎖の生合成を制御することで、多能性幹細胞の未分化維持に関する知見を得ることを目的とする。詳述すると、多能性幹細胞研究の現状から導いた、「多能性幹細胞の未分化の維持は、分泌性の蛋白質因子やそのレセプターの糖鎖がハイマンノース型であることが必然」という仮説を、申請者の駆使する研究手法により検証し、発展させることが本研究課題の目的である。 (平成27年度)マウスES 細胞でのゴルジマンノシダーゼIA の強制発現による細胞の性状および糖鎖構造への影響を解析するES 細胞でGolgiManIA の強制発現させることにより、(1)細胞が分化するか?、(2)糖鎖構造がどのように変化するか?を明らかにすることを目的とする。まず、マウスゴルジマンノシダーゼIA,IB,ICの発現用プラスミドDNA を作製する。次に、マウスES 細胞TT2に、マウスゴルジマンノシダーゼIA発現プラスミドDNAを導入し強制発現させた細胞を作製する。得られた細胞の形態観察をするとともに、未分化マーカーの遺伝子の発現の変化や、抗原の発現の変化を解析する。さらに、TT2細胞をレチノイン酸で分化させる過程で、マウスゴルジマンノシダーゼIAを強制発現させたときに、糖鎖構造がどのように変化するか?を細胞より調製した糖鎖を解析することで、明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、マウスES 細胞の糖鎖のみを単離解析するためには、(1)フィーダー細胞など余計な細胞の混入がなく、(2)培地に含有される血清由来の糖蛋白質の持ち込み量がなるべく低減され、かつ(3)ES 細胞が多能性を維持する条件、を探す必要が生じた。そこで探索した結果、市販の2種類の合成培地で、上記(1)~(3)を達成できることを見出した。合成培地で培養したTT2細胞は、レチノイン酸の添加により、Oct4の発現が消失するとともに、細胞の形態が変化したことから、平成27年度に確立した培養系で当初目的の実施項目を試せると考えられた。 次に、mGolgiManIA発現用のプラスミドDNAを準備した。 以上、糖鎖を解析するという目的に合致する、ES 細胞からのサンプル調製法の確立に時間がかかり、当初の予定よりはやや遅れている。しかしながら、当初計画においても、平成27年度実施予定の項目が年度内に終了しない場合には、平成28年度に完遂することを考慮し、記載しており、許容範囲内と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に樹立した、糖鎖を解析するという目的に合致するES 細胞の培養法を駆使して、平成28年度に結果を得る予定であった項目を実施する。すなわち、TT2細胞に、マウスゴルジマンノシダーゼIAを強制発現させたときの、(1)細胞の形態の変化の有無、(2)未分化マーカーの変化の有無を解析する。さらに、上記細胞をレチノイン酸で分化させる過程で、マウスゴルジマンノシダーゼIAの強制発現の有無で、糖鎖構造がどのように異なるかを明らかにする。さらに、マンノシダーゼ特異的阻害剤キフネンシンの効果も解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に実施する予定であった、糖鎖の調製、標識、解析が行われなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に前年度実施予定であった、糖鎖の調製、標識、解析を行う。
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