研究計画における項目4.各抗原特異的TCR鎖における単独の役割および発現量の違いによる影響、および項目5.エピトープ間相互作用の解析::当初計画に準じ、クローンマウス同士を交配することによって通常の2倍量の抗原特異的TCRを発現するT細胞を持つマウスを作出したところ、多くの個体においてリンパ節腫大等の免疫異常が観察され、その異常個体のCD4陽性T細胞における抗原応答性は失われていた。一方、異常を起こさない個体における抗原応答性は、一対の抗原特異的TCRを発現するクローンマウスと同程度であった。二倍程度の刺激強度の相違は、抗原応答性に殆ど影響を与えないことが示唆された。 クローンマウス由来のTCRを発現するマウスにおけるTCRレパトアの変化を検討したところ、既に発現しているTCR以外のレパトアが加齢により発現することが明らかになり、特にその傾向はTCRα鎖で強かった。クローンマウス由来の再構成TCR以外のTCRが、クローンマウスおよび野生型マウスのどちらのアレルに由来して再構成されるか、その機構も含め今後検討する必要がある。 研究計画における項目6.TCR親和性の意義:当初計画に準じ、作製した各クローンマウスのCD4陽性T細胞における抗原誘発サイトカイン産生パターンが異なることを見いだしていたが、同じ抗原に反応する異なるクローンマウス系統間で抗原応答性を比較した場合でも、サイトカインの産生パターンが明らかに異なることを見いだした。抗原に対する親和性が、T細胞の分化傾向に影響を与えることが明らかになった。
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