研究課題/領域番号 |
15K07788
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮崎 歴 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ長 (70358125)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | ストレス / 睡眠障害 / モデル動物 / サーカディアンリズム / メンタルシンドローム / マウス |
研究実績の概要 |
平成28年度は睡眠障害モデルマウスにおける炎症性の変化を検証するために、ストレス負荷したマウスから白血球を単離し、血球における免疫応答関連遺伝子の発現変化を解析した。その結果、睡眠障害モデルマウスではIL-1β、IL1-ra、IL-αの遺伝子発現がいずれも上昇していることが確認された。このことはストレス性睡眠障害の状態にあるマウスの体内のいずれかの組織において炎症があることを示唆するものである。近年、ストレスの応答性が免疫系シグナルを介して、脳内に伝わっているという報告もある。そこで、脳内のこれらILsの遺伝子発現を確認したが、大脳皮質における遺伝子発現としては差異は認められなかった。今後は、脳内におけるいくつかの部位、例えば海馬や視床下部などのストレス応答シグナルが入りやすい、ストレスに影響を受けやすい組織における遺伝子発現変化を確認する予定である。 また、今年度はアルツハイマー発症型マウスに対して、PAWWストレスを負荷し、睡眠を障害させる実験を行った。中途覚醒の頻度により睡眠障害の強い群と弱い群の2群に分け、ストレス負荷していないマウスとアルツハイマー発症および進行の状態を海馬におけるタウ沈着の程度により評価して、比較検討した。その結果、中途覚醒の現れる頻度が高いほど海馬におけるタウタンパク質の沈着蓄積が顕著となり、ストレスによる睡眠障害が、アルツハイマーの発症の憎悪化因子として働く可能性が示唆されている。現在この成果については、論文のリバイス中である。 さらに体温変化でのストレス応答性を評価するマウスモデル系を確立できるかどうかを検討した。体温センサーを体内に埋め込み、一過的なストレス負荷により体温上昇とその下降のプロファイリングを行って、ストレス改善効果のある被験物質の効果を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は使用予定の実験動物マウスの繁殖が不調で、実験動物を用いた多様な実験は行うことができなかったが、数少ない実験で得られたサンプルを有効に活用し、使用動物数を制限しながらも可能な実験を中心に進めた。
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今後の研究の推進方策 |
29年度に展開する計画のための予備的な実験を進めることとその情報収集、および実験を効率的に進めるための麻酔導入用気化器、組織破砕用装置の等の整備を行い、加速的に実験を進められる体制にある。最終年度に当たり、成果の結実を図ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用する実験動物の繁殖があまり振るわず、実験に使用する動物数が十分に確保できなかったため、動物実験に必要な経費を平成29年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には繁殖が回復してきたマウスを用いて動物実験を進める。そのために繰り越しした予算を使用する予定である。
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