チャノコカクモンハマキの茶葉への産卵から誘導が起きて、寄生蜂が葉表面を歩きながら反応するまでの時間は24時間以上必要であること、そして、その卵塊はふ化直前にはエリシター活性は低下することがわかった。さらに、腹部摩砕物を葉裏に処理した実験から、チャノコカクモンハマキ雌成虫の交尾・未交尾の状態はこの誘導には無関係であること、また、雄成虫腹部にはエリシター活性は存在しないことなどを実験で明らかにした。 ハマキコウラコマユバチの寄主ではないチャハマキ(ハマキガ科)の雌腹部摩砕物にはエリシター活性を持たない、すなわち、コマユバチの探索行動を刺激しないことがわかった。さらに、同様に寄主ではないアワノメイガの雌腹部摩砕物を処理すると、寄生蜂の葉上の探索行動に対してむしろ阻害的に働くことがわかった。これらの結果は、ガの産卵によって葉に卵が接する場合のエリシター作用には種特異性が存在し、ハマキコウラコマユバチの寄主探索にとって寄主以外の昆虫の産卵場所を素通りするか、逆に避ける行動が示唆されたことは興味深い。 また、誘導における分子機構に関しての予備実験を行い、いくつかの植物ホルモンシグナルに関連した遺伝子発現が、処理区と無処理区で異なる結果を得た。このことは、チャノコカクモンハマキの産卵によりエリシターが葉表面に作用し、植物ホルモン関連遺伝子が発現し防御機構が働くことで、葉表面が寄生蜂にとって探索を促すように変化している可能性が考えられる。
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