研究課題
Sf21細胞に野生型polyhedrin(WT)または変異型polyhedrin(R13A)とH1-EGFPの発現ウイルスを共感染させ、多角体(WT/H1-EGFP多角体またはR13A/H1-EGFP多角体)を作製し、Tris-HCl(pH7.5, pH8.0, pH8.5, pH9.0)に浸漬した。浸漬後0分、30分、60分、90分、120分に、セントリカット(分画分子量5万)で濾過して多角体を除いた液のEGFPの蛍光強度をFluoroskan Ascentで測定した。Sf21細胞にWT、H1-EGFP発現ウイルスを共感染させた後、R13A、H1-DsRed発現ウイルスをさらに共感染させて形成された多角体を共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察した。また共感染させるウイルスの順番と組合せ、接種の時間間隔を変えて同様の観察を行った。WT/H1-EGFP多角体ではTris-HClのpHが高いほど濾液の蛍光強度は高かった。R13A/H1-EGFP多角体では、pH8.0、pH8.5、pH7.5、pH9.0の順に蛍光強度が高い傾向にあった。層を持つ多角体を作製するために、WT、H1-EGFPの共感染から4時間後にR13A、H1-DsRedの共感染を行ったところ、EGFPしか固定されていなかったが層を持つと思われる多角体が得られた。その他にもEGFPとDsRedが混ざって各層に固定されている多角体が得られた。現時点で、多層構造多角体の作製に成功した。
2: おおむね順調に進展している
蛍光強度は固定されたEGFPが多角体から放出された量を示す。WT/H1-EGFP多角体のEGFP放出は、Tris-HClのそのpH条件におけるpolyhedrinのチロシンクラスターの部分的なイオン化を行わせることで、多角体の構造変化を誘導できるものと考えた。また、野生型多角体タンパク質からできた層と変異型多角体タンパク質からできた層を持つ多層構造を持つ多角体は光学顕微鏡観察のレベルで容易に判別できた。
今回作製した多層構造を持つ多角体の層構造の観察では、各層のpolyhedrinが野生型なのか変異型なのかを判別する点については今後の課題となった。また、同じ層に同じ蛍光タンパクが観察された多角体は、最初に感染させたウイルスによって合成された蛍光タンパク質が細胞内に残っており、次のウイルス感染による多角体形成時に混ざったためではないかと考えられ、これについても今後の課題である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件)
ACS Nano
巻: 11 ページ: 2410-2419
10.1021/acsnano.6b06099
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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