研究課題/領域番号 |
15K07797
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研究機関 | 南九州大学 |
研究代表者 |
新谷 喜紀 南九州大学, 公私立大学の部局等, 教授(移行) (50389574)
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研究分担者 |
神村 学 国立研究開発法人農業生物資源研究所, その他部局等, 主任研究員 (60370649) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 過変態 / マメハンミョウ / 分子機構 / 幼若ホルモン / 適応的意義 |
研究実績の概要 |
昆虫はその生活環の中に変態を組み込んでいる。一般の完全変態昆虫においては、モデル昆虫を中心として変態の分子機構が明らかにされつつある。完全変態昆虫の中には、幼虫期に脱皮をすると劇的に形態が変わる発育過程(過変態)を経るものがいる。ツチハンミョウ科は過変態をする昆虫の一つで、その中にマメハンミョウがいる。本種は、温度や光周期、餌の条件を調節することによって、コガネムシ型の4齢幼虫から直接蛹になる個体と、この科の過変態に特有の休眠態である5齢(擬蛹)になる個体に分けることができる。本研究では、過変態の分子機構の解明を試みた。昆虫では幼虫期の発生を制御するホルモンとして幼若ホルモン(JH)が知られている。血中JH濃度が高い若齢幼虫ではJH早期応答性のKr-h1が蛹化を抑制している。マメハンミョウでもJH/Kr-h1系が蛹化を抑制することを示唆するデータが得られたため、本研究ではマメハンミョウの過変態における幼若ホルモンの関与について調べた。擬蛹化条件の幼虫にJHアナログ(JHA)を処理したところ、擬蛹化は抑制された。蛹化の抑制と同様に、擬蛹化の抑制にもKr-h1が関与しているかを調べるため、Kr-h1発現量を測定した。擬蛹化条件の幼虫は擬蛹化に先立ちにKr-h1発現量が低下した。JHA処理した擬蛹化条件の幼虫はKr-h1の高発現が維持され続けていた。よって、擬蛹化は蛹化と同様にJH/Kr-h1系により抑制されることが示唆された。 また、先行研究で報告されていた餌条件による過変態の調節について野外での適応的意義を調べたところ、餌が不足した小さな個体は蛹化してその年のうちに成虫となり繁殖し、2世代を経過する生活環を実現していた。これは、餌が不足した個体は擬蛹化して休眠しても生存でき確率が低いためだと考えられる。つまり、本種の餌条件に対する柔軟な反応は、餌の不足を繁殖機会の増大で補う適応現象だと考えられる。
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