研究課題/領域番号 |
15K07798
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
北條 優 琉球大学, 農学部, 研究員 (80569898)
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研究分担者 |
重信 秀治 基礎生物学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30399555)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タイワンシロアリ / キノコシロアリ / オオシロアリタケ / Termitomyces / Odontotermes / 共生 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
日本に唯一生息するキノコシロアリであるタイワンシロアリを、2015年4月に沖縄県八重山郡西表島、石垣島および沖縄県那覇市首里周辺にて採集した。採集したシロアリの腸内容物からDNAを抽出し、オオシロアリタケに特異的なリボゾーマルDNA領域のプライマーを用いてPCRを行い、その共生菌の種を特定した。その結果、全ての島、地域において、2種のオオシロアリタケがタイワンシロアリと共生していることがわかった。 キノコシロアリのそれぞれのコロニーでは遺伝的に一つの菌のみと共生していることが知られているが、各コロニーから出現した羽アリを採集し、同様の方法でコロニーごとに共生しているオオシロアリタケの種を特定した。また共生している菌の種が特定できたコロニーの羽アリを用いてペアリング実験を行い、コロニー創設の方法を確立し、菌の伝播方法について考察した。 キノコシロアリの人工飼育は難しいとされているが、研究代表者は独自の方法によりタイワンシロアリの長期飼育を可能にした。この長期飼育コロニーを用いて、ビデオカメラによる菌園内の行動観察を行った。日本に生息するタイワンシロアリはワーカーに大小2型が存在することがこれまでの観察からわかっているが、行動観察の結果、菌園内ではワーカーは菌園管理に関する4種類の行動を行っており、これらの頻度は大小ワーカー間で相補的になっていることが明らかになった。またこれらの大小ワーカー間で発現に差がある遺伝子を、RNAseq解析によって調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイワンシロアリの観察には長期間の飼育が必要になるが、当該年度中に研究実施機関の異動があったため、一旦飼育を止めざるを得なかった。そのため、行動観察は半年間のみのデータを得るに留まった。しかし、菌園内のワーカーの行動観察に関しては、すでに十分なデータを取ることができた。 また、タイワンシロアリの羽アリの採集は4月の年1回のみのチャンスしか無く、異動後はコロニー創設実験を継続することができなかった。当該年度は初期コロニー飼育系を確立するために様々な方法で飼育を行っていた。そのため、菌の伝播方法の調査は、コロニー創設が成功した数コロニーのみで観察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は台湾の国立成功大学との共同研究体制を作り、これまで採集や飼育が難しかったタイワンシロアリを容易に入手することが可能になった。台湾国内で採集した羽アリや成熟コロニーを成功大学の研究室内で飼育し、長期間の飼育、観察が可能となる。DNAやRNAを用いた実験も成功大学で行うことができるため、データも採り易い。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は研究実施機関の異動があったために、当初計画していた分子実験を行うことができなかった。また当該年度に使用予定だった人件費・謝金等も、研究実施機関の異動により十分に雇用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に行うことができなかった分子実験や次世代シークエンスを用いた実験は次年度に繰り越して行うことにした。
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