研究課題/領域番号 |
15K07798
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
北條 優 琉球大学, 研究推進機構, 特命講師 (80569898)
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研究分担者 |
重信 秀治 基礎生物学研究所, 生物機能解析センター, 特任准教授 (30399555)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タイワンシロアリ / キノコシロアリ / オオシロアリタケ / Termitomyces / Odontotermes / 共生 |
研究実績の概要 |
日本に生息する唯一のキノコシロアリであるタイワンシロアリ(Odontotermes formosanus)が育てるオオシロアリタケ(Termitomyces)属の子実体の発生調査を、2017年6月と7月に西表島にて、2017年7月と8月に沖縄島にて行なった。これまでの研究では、タイワンシロアリは遺伝的に2種類のオシロアリタケ属菌を育てていることが知られていた。今回の西表島および沖縄島での大規模なフィールド調査により、子実体の形態が大きく異なる2種類のオオシロアリタケ属子実体を発見できた。それらの子実体からDNAを抽出し、リボゾームDNAのITS領域の塩基配列を確認したところ、これまでシロアリの巣から得られていた2種類のオオシロアリタケのDNA配列と完全に一致した。 また、2017年4月、10月、12月に台湾全域においてシロアリの生息調査を行なった。その結果、タイワンシロアリは台湾全域に最も普通に見られ、タイワンシロアリが森林生態系における木質バイオマスの分解に重要な役割を果たしていることがわかった。また台湾のタイワンシロアリは、日本と同じ2種類のオオシロアリタケを含む合計3種のオオシロアリタケと共生していることも明らかになった。 さらに、2017年7月から9月に沖縄島においてフィールド調査を行い、タイワンシロアリおよびオオシロアリタケの分布の現状を把握することができた。 日本のタイワンシロアリの大小ワーカーにおけるRNA-seqの解析では、レファレンス配列のアノテーション解析、カースト間の発現比較解析が終了し、ワーカーの菌園構築に関わる遺伝子を特定しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度は、研究代表者の所属の異動があり、当初予定していたタイワンシロアリの室内での飼育実験は予定していたサンプル数を用いて行うことができなかったが、菌の伝播に関わる予備的な結果を得ることができた。この結果をもとに、次年度に大規模な飼育実験を行う予定である。 また、比較トランスクリプトーム解析および比較ゲノム解析については、予定よりやや遅れているが、実験データはすでに得られているため、引き続き解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究代表者の度重なる所属の異動のため、室内でのタイワンシロアリの長期飼育はできていないが、次年度はタイワンシロアリを採集、飼育しやすい場所に所属しているため、大規模な飼育実験、行動観察が行える予定である。 行動観察およびトランスクリプトーム解析の結果をまとめ、ワーカーの菌床維持、管理について論文を作成し、投稿する予定である。またタイワンシロアリおよびオオシロアリタケのドラフトゲノムも次年度に論文執筆を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は研究代表者の所属の異動のため、当初の計画であった飼育や分子実験を十分に行うことができなかった。そのため、購入予定であった試薬消耗品、実験器具類、少額の機器類などの物品費は次年度に繰り越すことにした。一方、前年より行なっていた台湾でのタイワンシロアリのフィールド調査を継続するため、渡航にかかる旅費が必要になった。それらの差額が次年度への繰越となった。 次年度は大規模な飼育観察、および分子実験を行う予定であり、そのために使用する試薬消耗品、実験器具類、少額の機器類等の物品費が必要となる。また西表島へのサンプリングや学会発表にかかる旅費も必要となる。さらに、論文作成における英文校正費や投稿料も必要になる。
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