研究課題/領域番号 |
15K07802
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
高須 陽子 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 新機能素材研究開発ユニット, 主任研究員 (00414912)
|
研究分担者 |
飯塚 哲也 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット, 主任研究員 (80414879)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | カイコ / セリシン / 条件付き遺伝子ノックアウト / TALEN |
研究実績の概要 |
カイコの中部絹糸腺はセリシンタンパク質を大量に合成分泌する器官であり、遺伝子組換えカイコによる有用物質生産に利用されている。その際、大量の内在性セリシンが生産効率の低下の原因となっている。我々はゲノム編集技術を用いたセリシン遺伝子(Ser1)のノックアウトに成功しており、セリシンをほとんど分泌しないカイコ系統を得ているが、それらの系統はセリシンを失うことで大量のフィブロインを正常に吐糸できず、蛹化あるいは羽化できない個体が多いため維持が困難である。そこで、Ser1を標的とする人工ヌクレアーゼであるTALENをあらかじめカイコのゲノムに挿入し、必要な時に発現を誘導することによりSer1をノックアウトできる条件付きノックアウトを試みる。 今年度は、ゲノムに挿入したTALEN遺伝子の動作確認とセリシンの合成を有効に妨害できるTALENの選定を平行して進めた。 まず、TALENのクローニングベクターにhsp70遺伝子のプロモーターを挿入し、熱を加えることによりカイコ体内で転写が開始するよう改変した。すでに効率が確認されているTALEN遺伝子をこのベクターに組み込み、さらにpiggyBacベクターに組み込んだ。これを288粒のカイコ受精卵に注射したが、期待した組換え個体は得られなかった。注射したベクターが約14kbと比較的大きく、導入効率に問題がある可能性が考えられたため、1対のTALEN遺伝子を別々のpiggyBacベクターに組み込み、生殖細胞への導入を試みている。 一方、Ser1の転写制御領域、翻訳開始領域、反復領域のそれぞれを標的とするTALENのクローニングを行い、それぞれ48粒の受精卵に注射し、注射世代の営繭状態を観察した。その結果、反復領域を標的とするTALENのみで薄皮繭が多数出現し、条件付きSer1遺伝子ノックアウトに利用できることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ser1を標的とするTALENの選定は予定通り進み完了したが、TALEN遺伝子のゲノムへの挿入に失敗し、計画が少し遅れている。概要に述べた通りの方法で対処しているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、幼虫皮膚の体色に関係する遺伝子を標的とするTALENのゲノムへの導入を試みている。早急に導入を完了し、熱処理による動作確認を行う予定である。場合によってはプロモーターの変更なども必要になる可能性も考慮し、そのための準備を行う。熱処理により体色の変化がコントロールできることを確認したのち、Ser1遺伝子の反復領域を標的とするTALENに切り替え、改めてノックアウトの制御が可能かどうか検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
TALEN遺伝子のゲノムへの挿入に失敗し、ベクターの改変等に当初の予定を上回る試薬類が必要になったため、購入予定であったバイオシェーカー(98万円)の購入を取りやめたことから、研究予算に余裕ができ、一部次年度に繰り越すこととなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度もクローニング、遺伝子導入、発現解析を行うため、引き続き試薬、プラスチック製品等の消耗品の購入に充てる。余裕があれば熱処理のため、小型のインキュベーター(10万円)を購入する。
|