研究実績の概要 |
ショウジョウバエに感染して、胚発生初期の雄を特異的に殺す「雄殺し」と呼ばれる生殖操作をおこなう共生細菌スピロプラズマの持つ雄殺しの原因遺伝子の同定を目的とし、雄殺しスピロプラズマ2系統(NSRO, MSRO)および雄を殺さなくなった突然変異系統(NSRO-A)の計3系統について、引き続き完全ゲノムの決定と比較ゲノム解析に取り組んだ。 雄殺しスピロプラズマについては、それぞれの系統に特異的なファージが感染していることが知られており、昨年までに得られたスピロプラズマゲノムは、主にプロファージ配列により10以上のコンティグに分断されていた。そこで、まずはPCR産物のシーケンシングによってファージ全長配列を決定した。その結果、NSROおよびMSROについては各系統につき1種類、NSRO-Aについては少なくとも3種類の環状ファージゲノム配列(全長約19kb)が得られ、スピロプラズマドラフトゲノムを参照することにより末端配列を特定した。次に、第3世代シーケンサーMinION(Oxford Nanopore Technologies)によるロングリード配列を用いたスピロプラズマゲノムコンティグの結合を試みた。NSROを対象に行った1回のランで、ファージゲノムサイズを超えるリードが2,026得られたが、そのうちファージの全長を含む31リードのほとんどがファージ配列のみが複数連続で並んだものであり、ファージ粒子中に含まれる鎖状体ゲノムを読んでいると考えられた。アラインメントパッケージのCanuを用いたde novoアセンブルも行ったが、完全ゲノム決定には至らなかった。 今後は、ゲノム調整における断片化を可能な限り回避し、ファージ粒子を除去しつつ大量のゲノムを回収することで、よりクオリティの高いロングリード配列を取得し、完全ゲノムの決定を目指す。
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