研究課題/領域番号 |
15K07807
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 利次 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00390881)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ラッカーゼ / シイタケ / 遺伝子発現抑制 / RNAi / リアルタイムPCR |
研究実績の概要 |
本研究では、食用担子菌シイタケにおけるフェノール酸化酵素の1つであるラッカーゼ(Lcc)の遺伝子発現制御機構の解明とLccの機能解明を目的とする。そのために、RNA干渉(RNAi)法による各lcc遺伝子の発現抑制株の取得とその解析を行う。今年度は、シイタケゲノム中に存在する全16種類のラッカーゼ遺伝子の発現をリアルタイムPCRで解析した。 はじめに、シイタケゲノムに存在する全16種類の遺伝子発現パターンの解析を行うために、コントロール遺伝子(リファレンス遺伝子)の解析を行い、比較的安定に発現していたchs、ras、rpl2遺伝子の3種類の遺伝子を選抜した。 次に、発現抑制遺伝子を、逆方向反復配列として組込むタイプと、2種類のプロモータで発現抑制遺伝子を挟み込むタイプの2種類のRNA干渉(RNAi)ベクターによる、lcc1遺伝子の発現抑制に関して解析した。その結果、Lcc活性が高い時期の組換え体では、どちらのタイプのRNAiベクター導入株も、lcc1遺伝子の発現はあまり抑制されていないことが明らかになった。しかし、宿主株で発現していないlcc5遺伝子の発現が、すべての組換え体で、転写レベルでも再確認された。この結果から、lcc1とlcc5遺伝子のより特異性の高い配列を選択して、それぞれ単独に抑制するRNAiベクターと、lcc1と1cc5遺伝子を同時に抑制するためのRNAiベクターを新規に構築した。 また、宿主株に関して16種類のlcc遺伝子の発現の比較をはじめて行ったところ、lcc1遺伝子の発現が最も高く、lcc3、lcc5、lcc6、lcc12は検出されていないことが明らかとなった
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度ははじめに、リアルタイムPCR用のコントロール遺伝子(リファレンス遺伝子)の解析を行った。昨年までの結果と、最近報告された論文を参考に、構成的に発現している遺伝子の中から候補遺伝子として、5種類に絞った。宿主株と組換え体3菌株の液体培養時のLcc活性の高い時期の合計7種類の菌体からRNAを抽出し、それぞれの遺伝子の発現を比較した。その結果、比較的安定して発現していたchs、ras、rpl2遺伝子の3種類をリファレンス遺伝子として用いることとした。 次に、上記の7種類のRNAに対して、シイタケに存在する16種類のlcc遺伝子に関するリアルタイムPCRを行なった。その結果、宿主株では、lcc1の発現が最も高く、lcc3、lcc5、lcc6、lcc12は検出されなかった。これまで、液体培養時の宿主株における16種類のlcc遺伝子の発現は、報告されていないので、新規の知見が得られたことは研究の進展と考えている。 一方、RNAiベクター導入株では、lcc1の発現は宿主株に比べるとその発現は低い傾向にあったが、その抑制は必ずしも強くなかった。しかし、宿主株では発現していないlcc5がすべてのRNAiベクター導入株で検出された。この結果を踏まえて、lcc1とlcc5遺伝子に関して、それぞれ特異的な配列を利用した新たなデュアルプロモータ型RNAiベクターによる発現抑制ベクターを構築し、さらにlcc1とlcc5の連結遺伝子を挿入した同発現抑制ベクターを構築した。 しかし、lcc1とlcc5以外のlccに関する発現抑制ベクターは構築できなかった。また、Lcc変異株のゲノムウォーキング法によるベクター導入位置の遺伝子に関する解析に関しては、ほとんど進展がなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
lcc1遺伝子発現抑制株の解析に関しては、lcc1遺伝子の発現抑制が弱かったことと宿主株で発現していないlcc5遺伝子の新規の発現が確認された。この結果を踏まえて、それぞれの遺伝子に特異的な別の配列を用いた新たに発現抑制ベクターと、両遺伝子を同時に発現抑制するベクターを新規に構築できたことから、今後はこれらのベクターを導入した組換え体を造成して解析する。 また、lcc2~lcc4、およびlcc6の発現抑制ベクターの構築を行ない、シイタケに導入して組換えシイタケを解析し、その機能を探る。 一方、Lcc発現変異株に関しては、ベクター配列から周辺遺伝子まであと24bpまで達しているので、ゲノムウォーキング法によるベクター導入位置周辺の遺伝子解析を進め、変異株のベクター導入位置に存在するシイタケの遺伝子を解明する。
|