非加熱・無殺菌の米由来バイオマス(洗米排水・米糠混合物)を単一原料とした高光学乳酸生成プロセスの開発とその環境適応性・プロセスの安定化・乳酸生成収率の向上について検討し、下記の結果が得られた。 1.洗米排水より新規に分離した乳酸生成菌を用いたSSF(同時糖化発酵)による米由来バイオマスを単一原料とした高光学活性乳酸の生成機構の解明を行うにあたり、SSF発酵液中に含有する糖質バイオマス表層構造、プロテアーゼ、リパーゼ、各種糖化酵素等、菌体外酵素系の挙動解析を実施し、in vitroにおける乳酸生成能、SSF発酵液中プロテアーゼ活性、糖質由来の官能基に特異的な吸収(FT-IR)との間に高い相関性を認めた。さらに、SEM観察により高乳酸生成菌接種したSSFにおいて、洗米排水中固形成分であるデンプン粒子の結晶構造が認められた事から、菌体外プロテアーゼがSSFにおいて、乳酸生成を促進するリファイナリー機能を果たしていることが示唆された。 2.T-RFLP法による非加熱・無殺菌の米由来バイオマスを単一原料としたSSF内微生物菌叢構造解析の結果、高乳酸生成菌であるL. rhamnosus M-23株を接種したSSFにおいて、培養初期にClostridium(属)クラスターIX、同XIVa、Bacteroides目から成る菌叢を形成し、その後、Lactobacillales目によるドミナント形成(80%以上)が認められ、同時の高濃度の光学活性乳酸の生成・蓄積が認められた。それに対し、低乳酸生成菌(L. paracasei S-4株)は、培養初期に乳酸資化性を有するClostridium(属)クラスターIX(OTU:110)による菌叢形成と顕著な酢酸、プロピオン酸生成と乳酸濃度低下が認められた。これらの結果より、SSF内微生物菌叢の任意制御が効率的な乳酸生成に際し重要であることを示唆した。
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