研究課題/領域番号 |
15K07811
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
清水 将文 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60378320)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 土壌病害 / 生物防除 / 茎葉散布 |
研究実績の概要 |
本研究では、広範な難防除土壌病害の防除に有効な茎葉散布型微生物農薬の開発を目指している。申請者は、これまでに、トマトへの茎葉散布で青枯病を抑制し得る植物内生細菌3株を見出していた。遺伝子解析により、これら3菌株を同定した結果、いずれもヒトの日和見感染菌の近縁種であることが判明したため、平成27年度は、まず新たな候補菌株の探索を行った。その結果、前出の3菌株と同等の効果を有し、ヒト病原菌とは遠縁のBacillus simplexを1菌株見出すことに成功した。現在も引き続き候補菌の探索を進めている。選抜したB. simplex株は、青枯病菌汚染土への定植前にトマト苗へ1回散布するだけである程度の発病抑制効果を示すが、やがてその効果は低下し、最終的には処理苗も発病してしまう。そこで、5日間隔での茎葉散布による発病抑制効果を検討した結果、1回散布に比べて発病抑制効果とその持続性が向上することが明らかとなった。 茎葉散布により根から感染する青枯病が抑制できることから、その作用機構は全身抵抗性の誘導であると考えられた。そこで、同菌株を茎葉散布したトマト苗における防御関連遺伝子の発現をリアルタイムPCR法で解析したところ、茎葉部および根部の両方においてサリチル酸誘導型のPR-1遺伝子とジャスモン酸誘導型のLipoxygenase D遺伝子の発現量が顕著に上昇していることが明らかとなった。一般的に、青枯病菌のような殺生型病原菌にはサリチル酸誘導型抵抗性が、トマト萎凋病菌のような半生物栄養性病原菌にはジャスモン酸/エチレン誘導型抵抗性が有効であるといわれていることから、B. simplex株はトマト青枯病のみならず、萎凋病菌等の半生物栄養性病原菌による病害にも有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本課題の申請時までに見出していた生物防除菌3株がいずれもヒトの日和見感染菌の近縁種であることが判明したため、それら3菌株よりも安全性の高い菌株を新たに選抜する必要性が生じた。これにより、候補菌株の選抜からやり直すことになったため、平成27年度に予定していた実験項目全体の遂行が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き新規候補株の探索を進めているが、平成27年度に選抜した菌株については、予定通り各種の解析・評価を進める。ただし、進行中の候補菌探索でより効果の高い菌株が見つかった場合には、その菌株に切り替えて実験を遂行する。
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