本研究は、土壌病害の防除に利用できる茎葉散布型微生物農薬の開発を最終的な目標としている。昨年度までに、健全トマト苗から分離した内生Bacillus属細菌GEBT457株が茎葉散布でトマト青枯病を顕著に抑制できることを明らかにしてきた。本年度は、当該菌株のトマト青枯病防除効果を圃場試験で評価するとともに、他の土壌病害に対する防除効果の検討、当該菌株の最適培養条件の検討、植物に誘導する病害抵抗性等について解析を行った。その結果、GEBT457株は自然発生の青枯病汚染圃場においても、7日間隔ないしは14日間隔で散布することにより、安定したトマト青枯病防除効果を発揮することを確認した。そして、本菌株はFusarium oxysporum f. sp. lycopersiciによるトマト萎凋病に対しても茎葉散布で一定の防除効果を示すことも明らかにした。さらに、培養試験から、同菌株は一般的なBacillus菌の培養に用いられる培地では増殖が極めて緩慢又はほとんど増殖しないが、トリプチックソイブロスでは比較的良好に増殖すること、そして培養温度は35~40℃という比較的高温域が最適であることがわかった。防御関連遺伝子の発現解析から、同菌株はトマト苗にエチレン応答性およびサリチル酸応答性の防御関連遺伝子の発現を顕著に誘導することが明らかとなったことから、エチレン系およびサリチル酸系の抵抗性の誘導が本菌株の発病抑制の原因であると推察した。現在、トマトの葉温が同菌株の病害抑制効果に及ぼす影響を検討している。
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