研究課題
大気中に含まれる二酸化窒素は光形態形成(光による胚軸伸長抑制など)、栄養成長 (バイオマス蓄積)および生殖成長(花芽形成)を促進し、植物の成長を正に制御する因子であるとの作業仮説を提起している。二酸化窒素シグナルを受容し細胞内シグナルに変換するセンシング遺伝子は該制御において核心的役割を果たすと考えられる。その解明は、新しい植物生物学の展開や新規学術領域の創成、また画期的農業生産技術の開拓につながる可能性がある。そこで本研究では、まず二酸化窒素による胚軸伸長抑制形質を指標として、T-DNA挿入ラインを対象として同形質を欠損した二酸化窒素非感受性株を選抜して二酸化窒素シグナルを受容し細胞内シグナルに変換するセンシング遺伝子の特定を目ざした。二酸化窒素はシロイヌナズナの胚軸伸長を抑制するが、そのような形質を欠失した株は、二酸化窒素センシング遺伝子に不具合が生じた、二酸化窒素非感受性株であるとみなされる。そこで、これまでに二酸化窒素非感受性株およびその原因遺伝子(二酸化窒素センシング遺伝子)について解析した。野生株について該遺伝子の発現量は二酸化窒素有無で差がなかった。該遺伝子の制御下にある遺伝子群の発現応答は二酸化窒素の有無により差が見られた。故に、該遺伝子は二酸化窒素に応答して、その発現レベルを変えるのではなく、該遺伝子の制御下にある遺伝子群の発現応答を制御して、胚軸伸長を制御していると考えられる。平成30年度は、二酸化窒素によるバイオマス蓄積増加と該遺伝子の関連を明らかにするために、該遺伝子のT-DNA変異体を二酸化窒素有無の条件下で栽培して、バイオマス蓄積について調査した。その結果、該遺伝子の変異体は二酸化窒素存在下、非存在下でバイオマス蓄積に差が観察されなかった。以上の結果より、該遺伝子は二酸化窒素の胚軸伸張抑制に限らず、バイオマス蓄積にも関与することが示唆された。
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Plant Signaling & Behavior
巻: 14 ページ: 1559579~1559579
10.1080/15592324.2018.1559579
巻: 14 ページ: e1582263
10.1080/15592324.2019.1582263
巻: 13 ページ: e1513298
10.1080/15592324.2018.1513298