研究課題/領域番号 |
15K07817
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研究機関 | 国立研究開発法人 農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
阿部 薫 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, その他 (70355551)
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研究分担者 |
和木 美代子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (10355092)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工湿地 / 植生 / ANAMMOX / 窒素代謝微生物 |
研究実績の概要 |
嫌気条件下でNH4+とNO2-から窒素ガスを生じるANAMMOX反応は、従来の硝化-脱窒とは異なる新しい窒素除去プロセスで、排水処理分野で研究が進んでいるが、湿地など陸域生態系での研究は緒についたところである。申請者等は、浄化槽放流水が流入する人工湿地においてANAMMOX菌の棲息を明らかにし、植物根圏において亜硝酸を生成する硝化細菌や脱窒菌と密接に関連しながら窒素除去に寄与していると予想された。しかし、ANAMMOX 反応の必須基質のNO2-が硝化と脱窒のどちらから供給されるか、また、植生とANAMMOXとの関係は殆ど解明されていない。そこで本研究では、植生、土壌等とANAMMOX、硝化、脱窒菌など窒素代謝微生物の関係解明により、植生を導入した水質浄化システムにおけるANAMMOXの利用の可能性を探る。H27は、人工湿地における汚水流下条件と窒素浄化機能やANAMMOX等の分布について調査した。人工湿地を浸透流に切り替えると速やかに窒素流出は減少し、以降も表面流で管理し続けた人工湿地に比べ低く維持された。浸透流切り替え1年2ヶ月後に湿地内土壌を各3箇所採取し、深さ別(0~-2、-2~-5、-5~-10cm)に、形態別窒素濃度、窒素代謝微生物DNAを調査した。形態別窒素濃度は表層が高い傾向にあり、表面流湿地と浸透流切り替え湿地で大きな違いは認められなかった。アンモニア酸化細菌については両方の湿地において表層で高い傾向にあったのに対し、ANAMMOX菌は浸透流切り替え湿地では下層(-5~-10cm)で高い傾向があった。一方、礫など土壌以外の資材-植物系で水質浄化を行っている比較的好気的な運転条件の装置に関し、礫や汚泥などを採取しANAMMOX菌の検出を行った。人工湿地土壌に比べると1~2オーダー低い濃度であるが、ANAMMOX菌の存在を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌を用いる人工湿地システムは、表面流と浸透流で土層内や植物根圏の環境が異なると予想されることから、流れ方向を除き同条件のパイロットスケールの人工湿地を作成し、窒素浄化機能の違いを解析するとともに、浸透切り替え約1年後の湿地土壌の深さ別無機態窒素、ANAMMOX 菌やアンモニア酸化細菌の分布を明らかにした。 また、土壌を用いない、水耕や礫耕栽培型浄化システムにおいて、水質や汚泥中のANAMMOX菌の存在を確認し、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
浸透切り替え約2年後の土壌・植物根系(浸透流と表面流のパイロットスケール人工湿地)のANAMMOX菌の分布を引き続き調査するとともに、窒素代謝微生物の微生物濃度を調査し、その存在に影響すると考えられる物性の影響を解析・考察する。さらに、浸透法について、干満を繰り返すなどよりドラスティックな土壌・根圏環境が、ANAMMOX菌等窒素代謝微生物に与える影響の調査を開始する。一方、土壌を用いない既存の水質浄化系でそれほど大きなANAMMOX活性が得られなかったことから、非土壌系におけるANAMMOXを巡る窒素動態や植生との関係のため、ANAMMOX汚泥系に植生を導入したベンチスケールのシステムを立ち上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は、人工湿地土壌や水耕システム等のANAMMOX菌を中心に調査したが、H28に予定していたアンモニア酸化細菌の分布に関し、H27に予備調査を行ったところ、今後関連窒素代謝微生物の調査の強化の必要性を認識した。また、既存の水耕・礫耕型水質浄化システムで、ANAMMOX菌のホットスポットが見いだせてないことから、ANAMMOX汚泥系に植生を導入したベンチスケールのシステムを独自に立ち上げ研究を推進する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は、ANAMMOX以外の窒素代謝微生物の分布解析をさらに加速するとともに、研究の進捗に従い、新たに必要性の出てきた干満流の汚水流入システムやANAMMOX汚泥系に植生を導入したベンチスケールのシステムの立ち上や観測などを、予算を繰り越し実施予定である。
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