研究実績の概要 |
微生物燃料電池(MFC)は、様々な有機性排水から直接発電できる新規バイオリアクターである。しかし、微生物が電気を発生させる分子メカニズムは、殆ど解明されていない。本研究の目的は、メタゲノム解析により微生物発電における電子フロー(有機物の酸化反応で生じる電子が電極へと流れていく経路)を解明することである。 本研究では3つの実験系で解析を行った。第1の実験系では、MFCのカーボンクロス製負極(CCA)を電子受容体、活性汚泥を種汚泥(種菌)、酢酸を唯一の炭素・エネルギー源とした培養した。比較として、試験管で酸化鉄を電子受容体として利用する嫌気培養も行った。16S rRNA遺伝子を用いた菌叢解析の結果、MFCではGeobacter属細菌が高度に優先化(46%)していることが判明した。酸化鉄の系では、Pseudomonas属細菌が優先化していたことから、GeobacterはMFC環境で優先的に増殖できる発電細菌であることが示された。第2の実験系では、炎酸化ステンレス鋼負極(FO-SSA)を持つMFCで酢酸と酵母抽出液が含まれている培地で培養したところ、Geobacterではなく新規の発電細菌Desulfuromonas sppが優先化することを明らかにした。第3の実験系では、負電極としてCCA, FO-SSA,またはモリブデン(MoA)を持つMFCをそれぞれ培養して、HiSeq 2500 (Illumina)を用いたWhole-genome Shotgun法で細菌群の遺伝子配列を取得した。リードデータをMEGAN6などの解析ソフトを利用してメタゲノム解析を行った。比較として、開回路で培養したMFCも解析した。その結果、シグナル伝達系遺伝子群が閉回路サンプルで多く検出され発電における電子フローへの関与が示唆された。
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