研究課題/領域番号 |
15K07824
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 万奈美 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (70523588)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植物医師 / 植物病院 / ネットワーク / 教育プログラム / 社会連携 / コミュニティ植物医師 / コンサルティング / システム設計 |
研究実績の概要 |
本年度は、植物病院や植物医師の役割をどのように設定し、どのような形で設置すれば解決の糸口につながるのか、課題解決のための方策を検討するための基礎データを収集するため、日本国内で植物保護に係わる各都道府県の専門家を中心にインタビューを実施するとともに、今後のシステム検討の参考にするため、米国における植物病院および全米ネットワークの視察調査を行った。
日本での植物防疫は、各都道府県をベースとする地域ごとの生産農作物と直結しており、植物病理(糸状菌・卵菌、細菌、ウイルス)、昆虫、線虫、種子、雑草などの個別の専門家チームに分かれ、診断調査を行っているケースが多かった、個々の専門性と技術力は非常に高いが、専門以外の分野においては直ちに迅速な対応を行うことが難しいという現状がある。しかし、実際には、農家への指導にとどまらず、企業からの相談や、社会活動の中で一般市民を対象とする園芸相談などを行うこともあり、専門外の病害虫に遭遇する事も多い。そこで、あらゆる事例に迅速に対応できるよう、他の専門家との連携が容易にできるネットワーク体制の構築を望む声が多く聞かれた。一方、米国での調査では、植物保護ネットワークのための連邦組織であるNPDNと、代表的な植物病院2ヶ所(カリフォルニア州のCDFAとフロリダ州のUF PDC)を訪問した。米国では、情報と教育プログラムを提供する社会的役割をNPDNが担い、各州の植物病院では、植物保護に係わるあらゆる専門家が連携する中で全米ネットワークが構築されるなど、双方向のサポートならびにコミュニュケーションに関する体制が充実しており、社会連携と専門的知見が融合し有機的に機能していた。米国の体制の視察は今後、日本における植物医科学の社会システムを構築するうえで、役立つと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、コミュニティ植物医師の意識と行動について調査を行い、今年度は、日本国内で植物保護に係わる専門家を対象としたインタビュー調査ならびに、米国における植物病院および全米ネットワークの視察調査を行ったが、米国の視察調査は申請時は予定していなかったが、調査を進める過程で、植物医師に求められている社会的役割は、農業政策の支援のみならず、多岐にわたるコンサルタント的な要素が含まれていることが明らかとなってきた。植物病の診断・対策は、病気が何であるかが判れば終わりでなく、安全で安心な農作物の永続的のな確保から自然環境の保全に至るまでを網羅したうえでの対応が必要で、幅広い知識と判断力が要求されることから、日本においても、専門家ネットワークシステムの構築、ならびに教育システムの構築の必要性は極めて高いと考えられた。その面から、米国での調査結果は有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、本年度に得た情報を基に、植物医師が担う役割や方向性についての提案と課題をまとめていく。特に、植物医師がどのような場で活躍できる可能性が有るのか、またそのためにはどんな方策が考えられるのかなど、今後の展開を想定しながら、調査によって判明した問題点や妥当性、さらに将来性などについて分析し、特に考慮すべき内容をピックアップして、植物病院、植物医師の制度設計に関する今後の取り組みに繋げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
植物医師を支援するネットワークシステムの検討と構築に関する調査が必要であると判断したため
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次年度使用額の使用計画 |
植物医師を支援するネットワークシステムの検討と構築に関する調査費用として使用する予定
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