これまでの調査で、家庭菜園を行っている市民(コミュニティ植物医師)を対象に行ったヒアリングでは、全体の70%が植物医師からの指導を受けたいと答え、特に土づくり、病害回避に関する指導を要望する声が多く見られた。植物医師の専門分野は、市民ニーズにも十分対応でき、今後も需要は増えていくと思われる。そこで29年度は、全国の植物医師の特性調査を行い、植物病抑止に関する業務を行う専門家が抱える現状と課題の整理を行った。植物医師各人の専門分野は、菌類55%、細菌14%、ウイルス11%)、対象植物については、野菜類40%、果物類26%、穀類12%、花き類12%、その他10%となっている。農業において生産量の多い農作物を中心に複数の作物に対する知見を持った専門家が多かった。また、対応可能な植物防除の範囲については、総合防除25%、防除薬剤耐性および発生生態が17%、検出・診断および分類・同定が12%であり、また、全体の77%が40~50代の現役世代であり、分野の異なる専門家と地域を横断しての連携が難しいとの回答もみられた。WEBを利用してのコミュニティネットワークを試験的に実施したところ、遠隔地の植物医師より、情報交換に役立つとの意見が得られた一方で、時間や参加者が限定されるなど実装に至るには、改善の余地も残されていることが判明した。植物医師の専門性や知識レベルを生かし、植物病院制度を発展のためには、全国の専門家が地域を横断し活動できる社会体制の確立が必要である。
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