研究課題/領域番号 |
15K07829
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
渡辺 貴史 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (50435468)
|
研究分担者 |
馬越 孝道 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (30232888)
小林 寛 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (30533286)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 温泉発電 / 運営スキーム / 小浜温泉 / 湯村温泉 / 土湯温泉 / 適性評価 |
研究実績の概要 |
課題Ⅰの事例分析による運営スキームの解明に関して,まずは,全国の温泉発電の導入状況を明らかにした.その結果,温泉発電は全国で約20件近く導入されていること,時期としては2013年以降に急増していること,開設場所としては九州特に大分県に多く分布していること,事業主体としては旅館,エネルギー関連企業,地域内にて同事業のために独自に設立された団体等であること,そして発電方式としては,初期はフラッシュ方式が多く近年はほぼバイナリー方式がその大半を占めていること等が明らかにされた.上記とともに温泉発電を導入している土湯温泉(福島県福島市),湯村温泉(兵庫県新温泉町),小浜温泉(長崎県長崎市)において事業の成立過程と成立後の状況(年次計画の達成状況,想定外の事態の発生とそれへの対応,未利用温泉熱の有効活用の方策等)に関わるヒアリングを行った.また温泉発電の利用の促進と運営スキームの円滑な運用に資する法制度の運用状況(具体的には,再生可能エネルギーの固定価格買取制度の見直し(出力抑制の対象の拡張,日数制から時間制への移行等))も明らかにした. 課題Ⅱの温泉発電に適性がある温泉地の評価については,長崎県雲仙市が実施した小浜温泉における各泉源の温泉湧出量の最新データをもとに評価手法の検討を行った. なお本課題の成果を温泉発電に関心を持つ方々に知らせて問題共有を図るために,本研究課題の研究者らが中心となり,2016年3月19日に長崎県雲仙市小浜公会堂においてシンポジウム(「温泉発電をいかしたまちづくりと地域創生」(小浜温泉エネルギー活用推進協議会設立5周年記念シンポジウム(ジオパークにおける低炭素まちづくりと地域再生 Ⅳ)))を開催した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,後述する通り交付申請書に記載された2つの研究の目的に対して,一定の成果を上げている,あるいはデータを収集し解析を行っている.そのため本研究の「研究の目的」の達成度は,「おおむね順調に進展している」と判断される. (1)第一の目的である事例分析による運営スキームの解明については,交付申請書の研究計画・方法に記載した事例においてヒアリングを実施するとともに,全国的な動向や運営スキームの円滑な運用に資する法制度の運用状況を明らかにしたこと. (2)第二の目的である温泉発電に適性がある温泉地の評価については,長崎県雲仙市が実施した小浜温泉における各泉源の温泉湧出量の最新データをもとに評価手法の検討を行っていること.
|
今後の研究の推進方策 |
課題Ⅰである事例分析による運営スキームの解明については,前年度にヒアリングを行った3事例に対して追加調査を行うとともに,事例を拡充する.具体的には,松之山温泉(新潟県十日町市)と別府温泉郷(大分県別府市)を予定している.前年度の調査から温泉発電の運営スキームは,導入の目的や実施主体によって異なることが想定された.そこで本年度は,上記の仮説にもとづき,得られたデータの整理・比較を行い,温泉発電の運営スキームの共通性と異質性を明らかにし,異質性が生じた要因を考察する予定である.上記とともに運営スキームの円滑な運用に関わる法制度の運用状況(電気事業法の下での規制緩和等)も明らかにする予定である. 課題Ⅱである温泉発電に適性がある温泉地の評価については,前年度に取得したデータをもとに,温泉発電導入適性を評価する手法を開発する.併せて国内・海外の先行研究のレビューを通じて,温泉発電の多面的機能を評価するための指標を開発し,評価に関わるデータを収集する. なお得られた成果に関しては,関連学会誌(環境管理,ランドスケープ研究等)に投稿する.また,本課題の成果を温泉発電に関心を持つ方々に知らせて問題共有を図るために,温泉発電を導入している温泉を会場にしたシンポジウムの開催を検討する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用する予定の研究費が生じた経緯は,次の通りである.2015年度は,計画に記載した事例全てに対してヒアリングを行い,運営スキームに係る成果を論文投稿する予定であった.しかしながらヒアリングができた温泉地は限られたものとなり,論文投稿に必要なデータを収集できず,論文投稿に至らなかった.また温泉発電に適性がある温泉地の評価手法については,手法に用いるデータが十分に整備されていないことが明らかとなり,評価手法の再検討が余儀なくされた.次年度に使用する予定の研究費分については,前年度にヒアリングが出来なかった温泉地の現地踏査費,論文投稿費,発表する大会等の参加費及び旅費,そして評価手法の再検討により新たに必要となるデータ購入代に充てる予定である.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度に請求する研究費を用いた各研究目的に対する使用計画は,次の通りである.課題Ⅰである事例分析による運営スキームの解明については,前年度にヒアリングが出来なかった温泉地の現地踏査費,論文投稿費,そして発表する大会等の参加費及び旅費として使用する予定である.課題Ⅱである温泉発電に適性がある温泉地の評価については,評価手法の再検討に伴い必要となるデータ購入代やデータ整備等に係るアルバイト雇用費として使用する予定である.
|