研究課題/領域番号 |
15K07830
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
中山 祐一郎 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (50322368)
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研究分担者 |
保田 謙太郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00549032)
下村 泰彦 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (50179016)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 都市河川 / アブラナ属 / 外来種 / 植生 / 環境 / 景観 |
研究実績の概要 |
1)西日本の49の一級水系から得たアブラナ属973個体を、形態的形質とFCMによる同定に加えて、ゲノム特異的変異を利用したPCR法によって同定したところ、385個体はカラシナ、586個体はアブラナで、セイヨウアブラナは2個体のみであった。従来、河川に生育するアブラナ属は、輸入あるいは栽培されるセイヨウアブラナの逸出に起源すると考えられてきたが、アブラナが大半を占めることから、アブラナ属の河川への侵入経路を再考する必要性が指摘された。 2)河川堤防における植生管理の参考事例として昨年度から対象としている都市域の公共緑地である大阪府立大学構内の緑地において、絶滅危惧植物アゼオトギリの生育環境とその変遷を調査した。かつて存在した水田畦畔の埋土種子が緑地化された後に樹木の植樹にともなって地表に表れて畦畔植生が回復したこと、回復した植生は微地形や日射をさえぎる樹木や建物があれば水路の無い環境で生育できることが明らかとなった。また、そのような環境が定期的な草刈りで維持されてきたことと、アゼオトギリなど特定の植物にとっては草刈りが種子繁殖を妨げる時期に行われているので、時期を変更する必要があることなどが明らかとなった。河川の植生管理実態については、大和川河川事務所にヒアリングを行った結果、現行の年2回の草刈りが外来植物繁茂の一要因であると示唆された。 3)植生景観への意識調査では、外来植物が河川景観を構成する大きな要素となっており、春にはカラシナ、秋はハナカタバミやマメアサガオなどの花が咲いた景が好まれることが示されたので、河川の植生管理においては外来種を駆除するだけでなく、在来植生の回復を図り、その際に春にはカンサイタンポポやヒキノカサ、秋にはワレモコウやツルボなどが咲く景を回復の指標にすることが望ましいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1からは、昨年度のFCMに加えてPCR法による同定を行うことで、アブラナ属の分布実態がより正確に捉えることができた。そして分布の変遷に大きく関わる河川への侵入経路としての「油料用に輸入あるいは栽培されていたセイヨウアブラナの逸出・野生化」という仮説を修正する必要が示唆された。「2)都市河川における「在来植生」と「潜在植生」の推定」では、植生景観の変遷に影響する環境要因に関する調査を、河川堤防と管理方法や植生の類似する都市緑地で行い、絶滅危惧植物を含む植生の回復と維持に必要な条件を推定した。また、河川における植生管理の現状と植生調査から、現行の植生管理が外来植物の優占を招いていることを指摘した。一方で、優占する外来植物の花を望ましい自然として評価する傾向のあることが明らかとなったことから、河川の植生回復においては在来植物の花の咲く景が望ましい景観のひとつであると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
河川堤防における植生管理の参考事例として昨年度から対象としている都市域の公共緑地である大阪府立大学構内の緑地で絶滅危惧植物のアゼオトギリが発見され、その植生の維持機構が明らかとなった一方で、植生の維持に重要な被陰として貢献していた学舎が最近撤去された。この人為的な環境改変が植生の維持にどのように影響するかをモニタリングするために、研究機関を1年延長した。
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次年度使用額が生じた理由 |
河川堤防における植生管理の参考事例として昨年度から対象としている都市域の公共緑地である大阪府立大学構内の緑地で絶滅危惧植物のアゼオトギリが発見され、その植生の維持機構が明らかとなった一方で、植生の維持に重要な被陰として貢献していた学舎が最近撤去された。この人為的な環境改変が植生の維持にどのように影響するかをモニタリングするために、研究機関を1年延長した。その植生モニタリングの経費と、今年度成果の学会発表に係る経費として支出する。
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