草原の面積は減少を続けており,草原生植物の多様性も減少をしている.これまでは非商業地の半自然草原における植生保全が注目されてきたが,商業的利用の草原であっても,種多様性の高い草原植生を保全できれば,草原生植物の逃避場所や種子供給源として位置づけられる. そこで,歴史の長いゴルフ場で草原生植物の種多様性と絶滅危惧種の有無を確認した.その結果,全国版・地域版のレッドデータブックに掲載の絶滅危惧種および多くの草原生植物の生育を確認した.つまり,草原生植物の逃避場所や種子供給源として機能する可能性を明らかにした. コース管理者からの聞き取った管理方法と種多様性との関係を解析した結果,草刈り頻度および草刈高が種多様性に大きく影響を与えていた.つまり,草刈り頻度が低く,草刈高が高い地点においては種多様性が高く,逆の地点では種多様性が低かった.このように,種多様性の高い草原植生の保全には,管理手法が重要であることを明らかにした.さらに,1m*1mの植生調査を9分割したサブプロット単位での種の出現の仕方について,共起出現確率・類似度指数を比較した結果,同じ地点に出現しても,サブプロットでは,特定の種が優占する場合には,そのサブプロットには出現しにくい種があった. 採取した種子を播種して得た草原生植物の苗をゴルフ場に設置するとともに,ゴルフ場関係者の意向を把握する質問紙調査を実施した.質問紙ではゴルフ場を選択する際に重視することや,ゴルフ場に生育する植物に対する認識等について尋ねた.ゴルフ場を選択する際に重視することとして「自然環境の良さ」が30%以上あった.ゴルフ場に多様な野草が生育していることに対して,「プレーの邪魔になるとは思わない」「見た目が良い」「生物を保全している」との回答は,はれぞれ約80%であった.このように,ゴルファーの多くは野草の生育に対して好意的であることが示された.
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