研究課題/領域番号 |
15K07834
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研究機関 | 南九州大学 |
研究代表者 |
永松 義博 南九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60248622)
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研究分担者 |
杉本 和宏 南九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10331141)
宮島 郁夫 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20182024)
川信 修治 南九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30113260)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 棲霞園 / 偕楽園 / 出島 / 諸芸 / 申楽 / 挿し木 / 花色素分析 / DNA分析 |
研究実績の概要 |
本研究は以下の二つの課題で構成されている.長崎出島に存在した西洋式庭園および平戸「棲霞園」の変遷に関する研究は,現地の博物館や図書館等に所蔵された絵図面と文献,および現地での実測調査により,年代ごとの作庭経緯を明らかにしてきている.特に,「棲霞園」については,造成された江戸時代後期の40年間(文政7年(1824)~元治元年(1864)) について,家屋や園内構造物の建立年や現存する歌碑文から棲霞園作庭の変遷過程を明らかにする.また,植物種の同定は,平戸「棲霞園」に植栽されている植物種(主にツツジ類)について,形態調査とDNA分析により種を同定し,平戸周辺の武家屋敷跡の植物の種類と植栽頻度を調査することを目的に実施している. 平成27年度については,17世紀半ばに長崎出島に存在した西洋式庭園の実態を明らかにするため,松浦史料博物館,長崎大学付属図書館および長崎歴史文化博物館所蔵の絵図面や文献を収集・解析するとともに,博物館職員等からの聞き取り調査を行った.また,現地での写真撮影と実測調査を行い,平面図と三次元図面を作成した.さらに現存する絵図面や文献および庭園内に現存する歌碑の碑文から,家屋,池,石垣などの構造物の建立年を明らかにし,聞き取り調査の結果と先に作成した図面と照合することにより,当時の庭園の作庭過程と西洋式庭園の導入経緯を明確にすることができた.この調査をするために平戸市3回(平成27年5月,9月,平成28年2月)と長崎市1回(平成27年11月)出向いて実施した. 植物種の同定と植栽頻度については平成27年9月に研究対象地の平戸市松浦邸において,同庭園内に植栽されている13株のツツジ類から穂木を採集し,九州大学箱崎キャンパス内のミスト温室内で挿し木した.これらのツツジ穂木は平成28年3月に鉢上げして,現在,九州大学熱帯農学研究センターガラス温室内で管理中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一つ目の課題である長崎出島に存在した西洋式庭園および平戸「棲霞園」の変遷についての絵図面や文献の収集,博物館職員からの聞き取り調査ならびに現地での写真撮影・実測調査・図面作成はほほ予定通りの進歩状況である.さらに平成27年度の研究成果として,研究論文3編と口頭発表ならびにポスター発表9編を発表した. 二つ目の課題である植物種の同定と植栽頻度については平成27年度では研究材料の確保で,ほぼ予定通りの進捗状況である.
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今後の研究の推進方策 |
一つ目の課題である平戸「棲霞園」の変遷については長崎県平戸の「棲霞園」の絵図面全8枚をそれぞれ文政7年(1824),文政13年(1830) I版とII版,文政13年(1830)~弘化4年(1847) 頃のI 版とII 版,弘化4 年(1847)~嘉永元年(1848) の頃,嘉永元年(1848) ~安政6 年(1859) 頃,元治元年(1 864) の年代順に整理し,これらの絵図面から江戸時代後期の40 年間(1824 年~1864 年)にわたる棲霞園の作庭経緯について以下の項目を明らかにする. さらに,これらの絵図面に描かれ,現地調査によって現物を確認した圏内構造物の「歌碑」の内容をと照合し,歌碑が建立された時点(文政13年,1830)の圏内様相を調査する予定である.(1)棲霞園内の池と芝生を中心として植栽されていた植物の花や葉の色彩がもたらす群落として季節感の効果. (2)家屋の形や間取り,園路の形,花壇迷路の造成. (3)当時の時代背景. (4)施主・松浦熈の趣味,噌好,健康状態,生活環境. 二つ目の課題である植物種の同定と植栽頻度については,絵図面に描かれた植物および「棲霞園」に現存する樹木類について,形態的特徴をもとに照合して樹種名を特定する.また,ツツジ類については平成27年度に採集した穂を挿し木育成し,挿し木により得られたツツジ株を用いて,今後,花色素分析や葉のDNA分析を行う予定である.
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