研究課題/領域番号 |
15K07838
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
森山 裕充 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20392673)
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研究分担者 |
川本 進 千葉大学, 真菌医学研究センター, 客員教授 (80125921)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイコウイルス / 酵母異種発現系 / 微生物培養 / 生育阻害タンパク質 / タンパク質機能解析 / イネいもち病菌 / アルタ―ナリア・アルタナータ菌 / 生理活性タンパク質 |
研究実績の概要 |
イネいもち病菌に感染するMoCV1-A (Magnaporthe oryzae chrysovirus 1 strain A) は5本の二本鎖RNA (dsRNA1-5) をゲノムとするマイコウイルスで, MoCV1-Aに感染した宿主菌は生育不良を示し、精製したMoCV1-Aの粒子をイネいもち病菌の分生子に添加すると発芽や菌糸伸長が抑制される。 パン酵母異種発現系解析により、dsRNA4がコードするORF4が生育不良に関与する事が示されている。そこで、ピキア酵母で分泌生産させたORF4タンパク質をイネいもち病菌の分生子に添加したところ、コントロール溶液を添加したものと比べ菌糸の伸長抑制が観察された。本研究では、パン酵母異種発現系を用いたORF4タンパク質の生育阻害活性領域の探索による生産タンパク質の短縮化や、ピキア酵母菌体内からのタンパク質抽出の試みを通じて、生育阻害活性タンパク質生産方法の構築を目指した。 我々が生育阻害活性タンパク質生産のために利用しているメタノール資化酵母PichiaPinkTM Expression Systemでは、欠損している液胞性プロテアーゼ遺伝子が異なる4種類のピキア酵母株を使用している。先行研究においてORF4タンパク質の分泌生産時に使用していた株はStrain3 (ade2, prb1 )であったが、高い再現性は得られなかった。そこで再現性の低い分泌生産ではなく、菌体内からのORF4タンパク質の抽出を試みたところ、Strain3に比べStrain2 (ade2, pep4 )の方が菌体内のORF4タンパク質の蓄積が多いことが示された。ピキア酵母の菌体内から抽出する手法を用いることで、生育阻害活性タンパク質の再現性の高い生産が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタノール資化酵母Pichia pastorisを用いたMoCV1-A-ORF4タンパク質生産の試み、メタノール資化酵母Pichia pastorisによって生産されたMoCV1-A-ORF4pの生育阻害活性試験、パン酵母でのMoCV1-A-ORF4デリーションタンパク質の発現の解析の結果、生育阻害を示す特定のアミノ酸大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質の発現と精製においては培養、精製条件等の検討の結果、必要量の精製タンパク質を得ることができた。MoCV1-A-ORF4タンパク質(P4)生産の試みでは、先行研究のP4が培養条件で検出されたという結果は再現できていないが、フレンチプレスを用いてピキア酵母の菌体を破砕した際にP4を可溶性に抽出することができた。P4の生育阻害活性試験の系の構築、P4抗菌活性部位の特定と共に、分泌生産または菌体からの活性のあるタンパク質の抽出を引き続き試みる。
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今後の研究の推進方策 |
イネいもち病菌を弱毒化するマイコウイルスMoCV1は、真菌に対して広い抗菌性を示すタンパク質(ORF4)を有しており、新規抗菌剤としての利用や、物質生産に適する突然変異誘発剤としての応用が期待されている。しかし、現在までの予備実験では、ORF4全長タンパク質やその活性ドメインは、大腸菌や酵母で発現させた際に、その大半は不溶性となり、発現産物の評価が困難な状況であった。そこで今後は数残基の短いペプチド系溶解性向上タグ(Solubility Enhancement Peptide tag, 以下SEP タグ)をORF4蛋白質、またはその活性ドメイン(SUaドメイン)に付加することで、物性や構造を変えずに溶解性のみを飛躍的に向上させ、大腸菌での大量発現系を開発する。更に、抗菌活性測定を行い、その評価・解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度において、招待講演などの機会もあるため、平成28年度分の旅費予算に関しては、一部を平成29年度に繰り越した。 形質転換用大腸菌を、自作できたことにより、研究費を削減できた。また複数の業者から見積もりを徴収し、納入業者を選定することにより、安価に調達できたため。旅費に関しては、格安航空券を購入できた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である平成29年度は、研究成果をまとめるべく、英語論文校閲や、学会などにおける公開活動、また次期研究プロジェクトに繋ぐべき種々の研究経費に使用する。特に、マイコウイルスが宿主菌に及ぼす影響について、生化学的、または視覚的な研究項目に、研究費を費やす予定である。
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