研究課題/領域番号 |
15K07839
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹本 愛子 (田中愛子) 名古屋大学, 生命農学研究科, 研究員 (90464148)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 共生 / 転写制御因子 |
研究実績の概要 |
1.共生時特異的転写制御因子の同定 先に、Epichloё festucaeにおいて宿主植物との共生確立に必須である転写制御因子をコードするProAを同定した。E. festucaeとペレにあるライグラスとの共生におけるProAの機能を明らかにするため、野生株およびproA変異株感染サンプル、野生株の培養時のRNA-seqを実施した。本年度は、E. festucaeゲノム上の全遺伝子群から、ProAと同様なZn(II)2Cys6タイプDNA結合ドメインをコードする遺伝子群を検出するプログラムを作成した。その結果、全9,350遺伝子のうち53遺伝子からZn(II)2Cys6タイプDNA結合ドメインが検出された。そこで、これら53遺伝子の培養時と共生時の発現レベルを比較解析したところ、宿主植物感染時に発現が顕著に上昇するProAを含む9遺伝子を特定した。解析済みのProAを除く8遺伝子について、相同組み換えによる遺伝子破壊法を用いて、各遺伝子の遺伝子破壊株を作成した。
2.ProAに直接発現制御を受けるプロモーター配列の同定 ProAタンパク質が直接結合するプロモーター配列を特定するため、SELEX法を用いプロモーター配列の回収を行った。SELEX法に必要なゲノムライブラリーを作成し、ProAタンパク質とタグとなるMBPとの融合タンパク質を用いて、ProA結合性プロモーター配列を回収した。先に同定しているProA結合プロモーター配列PesdC b5を定量PCRにより検出し、濃縮前のDNAと比較し1回濃縮DNAで約4倍、2回濃縮DNAでは約7倍量となった。そこでこれらの濃縮DNAをMiseqを用いて配列解析(SELEX-seq)を行った。濃縮前、1回濃縮、2回濃縮の各サンプルを75bp、ペアエンド、100万リード解析した。ChIP-seq用解析ソフトMACSを用いて配列解析を行い、2回の濃縮によって20倍以上濃縮された455のプロモーター配列を検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共生時に重要な分泌タンパク質の機能解析を目指し、共生に必須な転写制御因子のターゲット遺伝子群の特定を行った。今年度は、すでに同定済みのProAについては、ターゲット遺伝子群を絞り込むところまでできている。さらに、網羅的な解析を目指し、新たな共生時特異的な転写制御遺伝子を見出し、機能解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seqデータとSELEX-seqデータの比較により、ProAターゲット遺伝子群より特に重要だと考えられる遺伝子群を絞り込み、その中から分泌タンパク質のシグナル配列をN末端に有するものを同定し、機能解析を進める。また、新たな共生時特異的転写制御因子が見いだせれば、ProAとの関係性についても調査し、E. fesutucae共生時における転写制御ネットワークを明らかにする。
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