これまでにEpichloё festucaeの宿主植物との共生確立に必須である転写制御因子ProAを中心にその分子機構の解明に向け研究を進めてきた。ProA変異体は共生を維持できなくなるだけでなく細胞融合能を喪失していたことから、ProAは細胞融合に不可欠な遺伝子群の発現に関与すると推定された。 1.ProAに直接発現制御を受けるプロモーター配列の同定 先に、ProAタンパク質が直接結合するプロモーター配列をSELEX法を用いて回収し(SELEX DNA)、Miseqを用いて配列解析(SELEX-seq)を行った。Epichloe festucae染色体配列から9833の遺伝子上流配列(1000 bp)を抽出し、Miseqによって得られたリードをマッピングした。MACSプログラムを用いて、非濃縮DNAと比較し濃縮DNAで特に高頻度でマッピングされた領域を検出した。上位100の領域についてモチーフ検索を行ったところ、先に同定したProA結合プロモーター配列と類似のモチーフが見出された。以上の結果から、E. festucae細胞内でProAタンパク質がSELEX DNAの一部に直接結合することが示された。 2.ProAに直接発現制御を受ける遺伝子群の機能解析 SELEX-seqによって特定されたプロモーター配列についてその下流に存在する遺伝子群は、ProAと同様に共生に重要な機能を果たす可能性が考えられた。そこで、これらの遺伝子破壊ベクターを作成し、野生株の形質転換を行った。10遺伝子について遺伝子破壊株が得られ、そのうち4遺伝子(PtpA、PtpB、PtpC、PtpD)の破壊株は細胞融合能が低下していた。 さらに、それらを宿主ペレニアルライグラスに接種したところ、いずれの破壊株でも宿主の生育が低下し、4遺伝子がProAに制御を受け細胞融合時に必要な遺伝子であることが示された。
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