研究実績の概要 |
植物抗原性糖鎖の骨格構造Man3Xyl1Fuc1GlcNAc2(M3FX)によるヒトTh2免疫応答の抑制機構を解明する研究の一環として,これまでに糖鎖を多価に結合させた種々の糖鎖ポリマー(植物抗原性・ハイマンノース型・動物複合型)の作製に成功した。そこで,本年度は(1)ヒト末梢血から単離したCD14+単球をIL-4とGM-CSF存在下で6日間培養し,誘導した未熟樹状細胞を用い,糖鎖ポリマーで2日間刺激を行い,分化マーカーである(CD80,CD86,HLA-DR)の発現をフローサイトメーターにより解析した。その結果,いずれの糖鎖ポリマーについてもCD80とCD86の発現への影響は確認できなかったが,植物抗原性糖鎖ポリマーはHLA-DRの発現を抑制し,M3FXの抗原提示抑制によるTh2免疫応答抑制への関与が示唆された。(2)自然免疫応答抑制活性を解析するためマウスマクロファージ培養細胞を用いた実験を行った。マウス分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)のレポーター細胞株(NFkB/SEAPoter RAW細胞)を播種し,LPS存在下,各種糖鎖ポリマーによる刺激を行った。24時間後,上清を回収し,SEAPの検出を行った。その結果,いずれの糖鎖ポリマーについてもLPSによるNFkB活性化の抑制には影響しないと考えられた。(3)スギおよびヒノキ花粉の主要アレルゲン(Cry j1,Cha o3)に結合しているN-グリカンは,M3FXの非還元末端がN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)やルイスa抗原で修飾された構造を有する。これらの植物抗原性糖鎖を多価に結合した糖鎖ポリマーの作製を目的として,タケノコ糖タンパク質からAsn糖鎖の多量調整を行った。また,(4)植物抗原性糖鎖の抗原性低下に関与するトマトα1,3/4フコシダーゼの2種遺伝子のうち未報告の遺伝子産物について論文発表を行った。
|