研究課題/領域番号 |
15K07842
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
末吉 紀行 香川大学, 農学部, 准教授 (90346635)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CaMKIδ / ホスファターゼ抵抗性 / CaMKIα / CaMKP |
研究実績の概要 |
CaMKIはCa2+シグナル系で中心的な役割を果たしているSer/Thrキナーゼであり、α, β, γ, δの4つのアイソフォームが存在する。CaMKIはCa2+/CaM存在下で上流のCaMKKによってリン酸化されて活性型となり、下流の基質をリン酸化する。CaMKIを細胞で発現させると、CaMKIαはCa2+刺激がない状態では全くリン酸化されないが、CaMKIδは有意にリン酸化され、CREBをリン酸化した。つまりCaMKIδには独特の活性制御機構の存在が強く示唆され、27年度はそのメカニズムの解明に取り組んだ。まず、CaMKIδの方がCaMKIαよりもCaMKKによるリン酸化を受けやすいのかを調べたところ、両酵素間で大きな差はなかった。次に、ホスファターゼ抵抗性を比較するために、CaMキナーゼホスファターゼ(CaMKP)を用いて、リン酸化CaMKIのin vitro脱リン酸化アッセイを行った。その結果、CaMKIαは速やかに脱リン酸化されるのに対し、CaMKIδは脱リン酸化されなかった。293T細胞にCaMKIとCaMKPを共発現させたところ、細胞内でもCaMKIδは脱リン酸化されにくかった。CaMKIδのN末端領域をCaMKIαと入れ替えたキメラを作製し、ホスファターゼ抵抗性に重要な領域を絞り込んだ結果、CaMKIδのサブドメインⅢ周辺であることが明らかになった。さらに、この領域内のアミノ酸をすべてCaMKIα型に置換することで、CaMKIδ変異体は脱リン酸化されるようになった。また、293T細胞においてCaMKIδ変異体をCaMKPと共発現させたところ、CaMKPによる脱リン酸化を受けやすくなっていた。以上の結果より、細胞内においてCaMKIδは、CaMKIαとのN末端領域のアミノ酸の相違によりホスファターゼ抵抗性を有するようになり、低Ca2+状態でも活性化状態を保ってCREBなどの基質をリン酸化していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
27年度の研究計画では、CaMKIδが細胞内ではカルシウム刺激のない状態でもリン酸化されていることに着目し、その活性調節メカニズムを明らかにすることを目標としていた。当初の想定とは異なる部分もあったが、N末領域のアミノ酸配列の相違により、他のCaMKIアイソフォームと比較してホスファターゼによる脱リン酸化を受けにくいことを明らかにし、Biochemistry誌に発表した。28年度以降に予定していたCaMKIδの内在性基質の探索にも前倒しで取り組むことが出来、いくつかの候補分子とリン酸化サイトを同定した。よって、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今までの体制を維持し、研究計画通りに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時には蛍光マイクロプレートリーダーを購入する予定で予算を計上していたが、減額されたため、予定通り購入すると消耗品予算を圧迫して研究の遂行に支障を来すと判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度配分予算と合わせて、主に消耗品費として有効利用する。
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