研究課題/領域番号 |
15K07845
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
太治 輝昭 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (60360583)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高温耐性 / シロイヌナズナ / エコタイプ / ナチュラルバリエーション |
研究実績の概要 |
本年度については、①シロイヌナズナ近縁の高温耐性植物Eutrema salsugineum (Thellungiella salsuginea)より得られた高温耐性付与遺伝子Heat shock factor A1d (HsfA1d) 導入トマトの作出と評価、および②高温耐性シロイヌナズナDa(1)-12と高温感受性シロイヌナズナEi-2を用いた高温耐性遺伝子座の同定を進めた。①については、前年度までに作成したHsfA1d導入トマトにおけるHsfA1d遺伝子発現量が低く、HsfA1dが転写制御すると予想されるHeat Shock Protein (HSP)群についても高発現が認められない問題が生じたことから、新たに形質転換体を作成することにした。前回との変更点としては、1)遺伝子を導入するベクターをトマトで実績のあるベクターに変更する、2)E. salsugineum由来のEsHsfA1dに加え、トマト内在性のオーソログ遺伝子であるSlHsfA1d、およびトマトHsfA1ホモログ遺伝子の内、高温により遺伝子発現誘導が認められるSlHsfA1b1を用いてトマトへの形質転換を行った。まだ種子まで得られていないものの、作出したそれぞれの形質転換体における導入遺伝子の発現量、およびHSP群発現量を確認した結果、導入遺伝子・HSP群ともに野生型と比較して高発現している形質転換体を獲得することに成功した。②については、前年度にEi-2 x Da(1)-12にDa(1)-12を3回掛け戻すことで作出したNear Isogenic Lines (NILs)の高温耐性と遺伝子型を解析することで、高温耐性に寄与する遺伝子座を144kbp内まで絞り込むことに成功した。加えて、両accessionをゲノムシークエンスすることで144kbp内に存在する全遺伝子多型の検出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温耐性トマトの作出に向けては、新たにベクターを変更し、かつ複数種類のHsfA1遺伝子群を導入したことで、目的遺伝子の過剰発現、および高温耐性向上の肝となるHSP遺伝子群の高発現が確認出来たのは大きな進捗であった。また、シロイヌナズナaccession間に見られる高温耐性バリエーションの解析については、昨年作成したNILにより原因遺伝子座を精密に絞り込むことに成功したことのみならず、目的遺伝子座のみで大きな高温耐性の差を生じることを明らかにすることが出来た。さらにゲノムシークエンスにより非同義置換を誘導する遺伝子が分かったことから、原因遺伝子の候補を大きく絞り込むことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
HsfA1導入トマトの解析については、種子の獲得と増産を行い、耐性試験およびRNAseqによる導入遺伝子の影響、すなわち下流遺伝子の特定を進める。耐性試験については、共同研究先である筑波大学の江面博士および星川博士に協力頂き、長期高温ストレス下におけるストレス耐性試験を行う。特にトマトの高温障害として知られる、着果不良(高温による影響が出やすい花粉への影響確認)・不良果(着色不良)・尻腐れ果・日焼け果への影響を調べる。また最終年度となるため、論文作成を行う。 シロイヌナズナaccession間に見られる高温耐性バリエーションの解析については、原因遺伝子領域として絞り込みに成功した144kbp間における非同義置換を有する遺伝子を優先的に、相補試験による原因遺伝子の特定を行う。具体的には、高温感受性NILにDa(1)-12(耐性)由来の遺伝子を相補、あるいは耐性NILにEi-2(感受性)由来の遺伝子を相補する試験により決定する。またほとんどEi-2ゲノムを有するが、非常に小さな領域のみDa(1)-12(耐性)由来のゲノムを持つだけで耐性を示すNILが得られたことから、このNILとEi-2を用いた様々な生理学試験およびRNAseq解析を行うことで、原因遺伝子がどのようなメカニズムで高温耐性の差を生み出すのかを明らかにする。
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