本研究では、植物の高温耐性における多様性機構の解明と高温耐性付与遺伝子の探索・応用を目的に、①モデル植物シロイヌナズナのaccession間に見られる高温耐性バリエーションのQTL解析、および、②シロイヌナズナ近縁の高温耐性植物、Eutrema salsugineumより単離した高温耐性付与遺伝子、Heat shock factor A1d (HsfA1d)のトマトへの応用を実施した。①については、高温耐性シロイヌナズナDa(1)-12と高温感受性シロイヌナズナEi-2を用いた高温耐性遺伝子座の同定を進めた。Ei-2にDa(1)-12を3回掛け戻すことにより、Near Isogenic Lines (NILs)を作成し、その表現型と遺伝子型を解析することで、高温耐性に寄与する遺伝子座を144kbp内まで絞り込むことに成功した。両accessionの原因遺伝子座についてシークエンスを決定することで、非同義置換を有する候補遺伝子を探索、さらに候補遺伝子の相補性試験を行うことで原因遺伝子を6遺伝子に絞り込むことに成功した。②については、E. salsugineum由来の遺伝子に加え、トマト内在の高温誘導性HsfA1bおよびHsfA1dオーソログ遺伝子を極矮性トマトのMicro-Tomおよびイネに導入した形質転換体を作出した。トマトにおいては高温応答のマーカー遺伝子群も整備されていないことから、野生型のトマトを用いたRNAseq解析により、高温応答マーカー遺伝子群を見出した。HsfA1は転写因子であることから、作出したHsfA1導入トマトにおける遺伝子発現を調べた結果、見出したマーカー遺伝子群の多くが転写制御されていることが明らかとなった。これらの結果より、形質転換体の高温耐性向上が大いに期待される。
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