1.Creg1の作用メカニズムの検討 Creg1の褐色脂肪化促進作用がIGF2Rを介しているかをsiRNAを用いて検討した結果、IGF2Rをノックダウンすると褐色脂肪細胞の分化が阻害されUcp1の発現が大きく低下したが、Creg1作用との関連を確認することはできなかった。一方、Creg1タンパク質で刺激した細胞におけるシグナル分子の変化を調べた結果、褐色脂肪化にかかわるCREBのリン酸化が上昇する傾向が認められた。また、固定化したCreg1タンパク質と結合する分子としてIGF2Rを検出したことから、Creg1がIGF2Rと結合し褐色脂肪化を促進するシグナルを動かしている可能性が示唆された。 2.Creg1の生理的、病理的役割の検討 トランスジェニック(Tg)マウスの戻し交配と表現型の解析を進め、Creg1低発現、中発現、高発現の3つのラインについてN4およびN5世代マウスを用いて検討した。中発現については個体数が少なく十分な検討ができていないが、他の2ラインについて2~3ヶ月齢から高脂肪食を投与した結果、野生型マウスに比べて、摂食量に差はないが体重増加が有意に抑制され、Tgマウスは食事誘導性肥満に対して耐性を示すことが明らかとなった。脂肪組織の解析から、Tgマウスの褐色脂肪組織におけるUcp1のタンパク質量が上昇し、白色脂肪組織の褐色脂肪化も確認された。これらの結果は、Creg1が生体内において褐色脂肪細胞の分化を誘導し、適応性熱産生によりエネルギー消費に寄与することを強く示唆するものと考えられた。
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