研究課題
多くの組織で産生される分泌タンパク質Creg1はテラトカルシノーマの分化や胎生期における心臓の発達に働くことが報告されている。しかしながら脂肪組織における役割については明らかではない。本研究では昨年度に引き続き、脂肪組織特異的Creg1トランスジェニック(Tg)マウスを用いてCreg1の脂肪組織における生理的および病理的役割の検討を行った結果、野生型(WT)マウスと比較して、Tgマウスは3ヶ月という長期的な高脂肪食投与による食事誘導性肥満の進展に対しても抵抗性を示すことが確認された。一方、摂食量に差は認められず標準食投与ではWTとTg群の体重に違いはなかった。昨年度の報告と一致してTg群では褐色脂肪組織の発達がみられ、交感神経活性化剤の投与により酸素消費量の上昇が認められたことから、Tgマウスでは褐色脂肪組織のエネルギー代謝容量の増加が食事誘導性肥満の進展予防に寄与していると考えられた。またCreg1の褐色脂肪組織の発達における作用メカニズムの検討をin vitroの細胞培養系を用いて実験を行った。種々の検討から、Creg1の発現誘導により褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞の分化に関わることが報告されているFgf21の発現が有意に上昇することが明らかとなった。また、Fgf21は糖代謝の改善にも効果を示すことから肥満のみならず糖尿病などの生活習慣病の予防改善剤として期待されている。本研究の結果は、Creg1がFgf21の発現制御を介して褐色脂肪細胞の分化を促進し余剰エネルギーの消費を介して抗肥満作用を発揮する可能性を示唆するものと考えられた。今後Creg1の作用メカニズムのさらなる解明に興味がもたれる。
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FEBS Open Bio
巻: 7 ページ: 1009-1016
10.1002/2211-5463.12240