研究課題/領域番号 |
15K07849
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塚本 裕一 東北大学, 薬学研究科, 講師 (70323037)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エナンチオ選択的アンチWacker型環化反応 / ジインの非対称化 / アレニルホスフェートの動的速度論的分割反応 / キラルルイス酸 / キラルブレンステッド酸 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、当初計画していたエナンチオ選択的アンチWacker型環化反応についていくつか検討を行った。キラルモノホスフィン配位子を利用したジイン化合物の非対称化反応の開発においては、ジイン基質の合成には成功したものの、一つのエチニル基の存在によって付加・環化反応の収率は大幅に低下し(30%以下)、(S)-MOP配位子による不斉収率は28% ee程度にとどまることがわかった。続いて、ラセミ体アレニルホスフェートの動的速度論的分割反応を利用した光学活性テトラヒドロピリジンの効率的合成法の開発では、2段階目の付加・環化反応においてアレン上の置換基の適用範囲を先に検討した。その結果、メチル基よりも嵩高いエチル基やt-ブチル基では大幅な収率の低下が観測されたため、本計画をやむを得ず中止した。また、当初の予定にはなかったが、アルキン-アルデヒド基質、有機ホウ素試薬、化学量論量の光学活性第二級アミンの三成分連結反応による環状アリルアミンのジアステレオ選択的合成法について検討を行った。得られるアリルアミンは、辻-Trost反応の基質となることが報告されているため、上記反応において第二級アミンを触媒量に低減し、炭素求核剤を第三成分とするカップリング反応が可能になるものと考えた。1段階目の反応では、第二級アミンとして林・Jorgensen触媒がジアステレオ選択性発現に有効であることがわかったが、2段階目の辻-Trost反応が進行しないことが明らかとなった。しかし、パラジウム触媒と第二級アミンは共存可能であることが証明されたため、アルキン-α,β-不飽和カルボニル基質と有機ホウ素試薬のエナンチオ選択的付加・環化反応などに利用できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点では、積極的な不斉反応の開発には至っていないため。平成29年度は、キラルルイス酸・ブレンステッド酸を用いたエナンチオ選択的アンチWacker型環化反応を開発し、応募者が開発した本付加・環化反応の有用性を拡張する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、キラルルイス酸およびブレンステッド酸触媒を利用した環状アルコール・アミンの不斉合成法を開発する。キラルルイス酸としては、触媒的不斉向山アルドール反応やDiels-Alder反応に用いられる触媒を活用し、アルデヒド求電子剤へのエナンチオ選択的付加について検討を行う。また、有機ボロン酸のユニットを含むルイス酸触媒についても検討を行い、触媒配位子と化学量論量存在する有機ボロン酸を用いた系中での触媒調製について検討を行う。求電子剤としては、アルデヒドのみならず、1,2‐ジカルボニル化合物についても検討し、キラルルイス酸触媒とのより強固なキレーションにより、エナンチオ選択性の制御を試みる。さらに、寺田・秋山らによって開発されたビナフチル骨格を含むキラルリン酸をイミンまたはエナミンに添加することで、生じるイミニウムイオンの対アニオンの不斉情報を活用したエナンチオ選択的環化反応を試みる。上記反応では、パラジウム触媒と不斉触媒との共存性が懸念されるが、共存可能であることがすでに証明されているパラジウム-キラル第二級アミン触媒を用いて、アルキン-α,β-不飽和カルボニル基質と有機ホウ素試薬のエナンチオ選択的付加・環化反応を検討する。
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