銅触媒を用いた無保護糖のプロパルギル化を精査し、C3位置換シアル酸誘導体の合成を達成した。 置換基を有したアレニルボロネートを求核剤前駆体とした、立体選択的プロパルギル化を昨年度までに見出していたが、生成しうる4つの異性体のうち2種類をおよそ90%の選択性で作り分けることに成功した。配位子、銅塩、ホウ素化合物の選択が立体制御に非常に重要である。NMR実験およびアレニルボロネートの構造を変化させた対照実験より、条件によって反応経路が大きく変化していることが示唆された。すなわち、銅触媒がLewis酸として働く反応経路と、銅触媒へのトランスメタル化によって進行する経路の2通りの存在が示唆されている。 適用範囲を拡大するため、求核剤前駆体のアレニルボロネートを各種合成し、同反応条件に付したところ、様々な置換基を有したアレニルボロネートを用いても、高い立体選択性で反応が進行することが分かった。 生成物からC3位置換シアル酸誘導体への変換にも取り組み、プロパルギル化体よりわずか2工程で、保護基を用いることなくC3位置換シアル酸誘導体へと導くことに成功した。精製法の確立が課題であったが、逆相カラムと逆相HPLCを活用することで単離に成功している。 昨年度見出していた1,4-エンインからアレンへの銅触媒不斉プロトン移動反応の基質適用範囲を大幅に拡充した。これによって、原子効率に優れたキラルアレン合成を複雑なアレン合成へと適用できることを示した。
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