研究課題
抗菌剤に対する耐性菌の出現と蔓延は世界的問題である。そこで、研究代表者は複数のアルキルアミノ基を集積したオリゴ糖シクロデキストリンが細菌膜を傷害して抗菌性を示すことを発見した。ここでは、その構造と活性の関係を調べ、その優れた特徴を理解するための基礎研究を行った。具体的には、(1)どのような構造が活性に大事かを調べるために、種々のアルキルアミノ基をシクロデキストリンとオリゴ糖に備え付けた物質を系統的に合成する、(2)細菌、動物細胞への作用を調べ、どのような構造が、どのような活性を現すかを検証する、(3)細菌膜への作用を検証し、どのように膜を壊しているかを明らかにする、ことを目的とした研究を行った。まずは、アルキルアミノ基のアルキル部の構造が異なるシクロデキストリンを系統的に合成した。また、アルキルアミノ基の数が抗菌性にどう関わるかを明らかにするために、α、β、γシクロデキストリンを原料に、アルキルアミノ基の数が6~8個と異なる物質の合成研究を行った。さらに、アルキルアミノ基を環状に配置することが必須なのかを明らかにするためにシクロデキストリンと同じアルキルアミノ基を持つ直鎖のマルトオリゴ糖を合成した。さらにアルキルアミノ基を1個持つグルコース、2個持つマルトース、また、100個および1000個程度のアルキルアミノ基が集積したアミロースを合成した。次に、グラム陽性菌、グラム陰性菌に対する抗菌性について最小発育阻止濃度を測定した。さらにMRSA等の薬剤耐性菌に対する試験を実施した。別に、溶血性試験を行い、動物細胞への毒性を評価した。そして蛍光色素を活用して、細胞質膜傷害による細胞膜電位の変化、そして、グラム陰性菌外膜の外膜傷害を観察した。以上の研究を通じて、抗菌オリゴ糖の構造と活性の関係を系統的に明らかにすることで、細菌に対抗する物質へと展開する研究基盤を構築できた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
MedChemComm
巻: 9 ページ: 509-518
10.1039/C7MD00592J