本研究では、医薬品や天然物等の生物活性物質合成において重要でありながら、依然として適用可能な方法論が限られている不斉四置換炭素構築を、高い原子効率・環境調和性にて実現する新たな手法の開拓を目的とし、研究を行った。 最終年度である平成29年度においては、前年度までで検討を進めた新規触媒的不斉四置換炭素構築法について、計5報の論文として報告を行った。また、これらの結果は国際学会や招待講演などの各種学会にて発表を行った。 上記に加えて、本手法のさらなる適用範囲の拡大を目指し、検討を行った。その結果、前年度までの検討からは実現が困難であることが予想された反応についても、反応基質を変更することで反応が進行しうることが判明した。そこで、本反応についてさらなる検討を進めた結果、高い収率および立体選択性にて目的の不斉四置換炭素含有化合物が得られる条件を見出すことができた。さらに、本手法を用いて生物活性物質の短工程合成を行い、これまでで最も短い工程数にて合成を実現することができた。 また、前年度の検討から、従来の触媒とは一部構造が異なる触媒が高い立体選択性にて不斉四置換炭素含有化合物を与えることが判明していたが、本年度はその立体選択性の起源について、実験的な反応機構解析および計算化学の手法を用いることで、詳細な反応機構を明らかにすることができた。 さらに、上記の不斉四置換炭素合成に必要な反応基質の触媒的合成手法についても検討を行った結果、従来よりも簡便な手法で基質を合成可能なことが判明した。これにより、本研究で確立した新規不斉四置換炭素構築法の実用性をより一層高める可能性を見出した。
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