研究課題/領域番号 |
15K07861
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
石原 淳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (80250413)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 合成化学 / 天然物合成 / 海産天然物 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、アポトーシス誘導活性を有する海産天然物ポルチミンの合成を行った。今年度は、本天然物中の特異な構造であるジオキサビシクロ[6.2.1]ウンデカンの骨格形成反応を中心に検討した。 まず、市販の1,4-シクロヘキサンジオン-モノエチレンケタールから5工程で得られるアルデヒドを基質とするBrown不斉クロチル化を行い、高収率かつ高エナンチオマー選択的に二連続不斉中心を有するホモアリルアルコール体を得た。一方、市販のL-リンゴ酸から光学活性なアリルアルコール体を容易に合成した。得られた二つのアルコールをシリル基を介して連結させた後、閉環メタセシス反応と接触水素添加を含む7工程により4つの立体中心を含む環状アセタール前駆体へと変換した。この前駆体に対し、種々の酸性条件下、環状アセタール化を検討したが、パラメトキシベンジル(PMB)基の脱保護などの副反応が起こり、複雑な混合生成物が得られた。そこで、PMB部位をベンジル部位に変更した基質を新たに合成した。この直鎖ベンジル保護体をアセトニトリル中、フッ化水素-ピリジン錯体で処理すると、t-ブチルジメチルシリル基とモノエチレンケタールの除去とともに分子内アセタール化が進行し、1ポットで環状アセタール化合物の生成が観測された。これにより、低収率ではあるものの、ポルチミンのコア骨格であるジオキサビシクロ[6.2.1]ウンデカンの骨格形成が可能となった。本反応の条件検討ならびに前駆体合成の効率化は今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の当初実施計画は、環状アセタール骨格の構築であった。 パラメトキシベンジル基を有する基質では環状アセタール化の際に複雑な混合物を与えたため、ヒドロキシ基の保護基をベンジル基に変更し、アセタール化の検討を再度行った。収率には問題があるものの、最終的に今年度の当初目標を到達できた。
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今後の研究の推進方策 |
オキサビシクロ[6.2.1]ウンデカンの骨格形成方法を見出したが、収率に改善を要する。そこで、まず環状アセタール化反応を精査し、収率の向上と効率性を検討する。次にアザスピロデカン骨格の構築を行う。すでに我々が報告した不斉銅触媒を用い、立体選択的なスピロ環構築を行う。本反応がうまく進行しない場合は、我々が最近見出したLewis酸テンプレートDiels-Alder反応を用いることで、アザスピロデカン骨格の形成は可能と思われる。さらに、リチオスルホンを用いる分子内環化反応により、ポルチミンの全炭素骨格を導入する。その後、種々の官能基変換を行い、ポルチミンの全合成を行う。 本研究計画は、十分精査したものであるが、万が一計画通りに進まない場合は、合成試薬や条件を変更するか、柔軟に合成戦略を修正し、ポルチミンの全合成を行う。
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