研究実績の概要 |
引き続き、アポトーシス誘導活性を有する海産天然物ポルチミンの合成を行った。 本年度は、本天然物のコアとなるジオキサビシクロ[6.2.1]ウンデカン骨格に焦点をおき、モデル化合物にて本骨格の形成反応の検討を行った。すなわち、これまで得られた結果に基づき、市販の1,4-シクロヘキサンジオンエチレンケタールから5工程で得られるアルデヒドのBrown不斉クロチル化を行い、高収率かつ高エナンチオマ選択的に二連続不斉中心を有するアルデヒド体を得た。別途、シクロヘキサンを有するリン酸エステルを調製し、Horner-Wadsworth-Emmons反応にて、上記のアルデヒドと縮合し、Piv基を水酸基の保護基として有するモデル化合物を得た。このモデル環化前駆体に対し、種々の酸性条件下、ビシクロアセタール化を検討した。いずれの条件でも多成分の生成物を与えたが、この中にPiv基の1,2-アシル転移を伴いながら10位と14位間で環化が進行したテトラヒドロピラン体があることを見出した。このことは、7位と10位間のアセタール環化が先に進行しなければならないことを示していると考えた。そこで、一挙にビシクロアセタール骨格を形成するのではなく、7位と10位間で環状アセタールを形成した後、ビシクロアセタール化を行うこととした。まずケタール保護基をメタノール中で除去し、メチル環状アセタールを合成した。その後、酸性条件で処理すると、望むジオキサビシクロ[6.2.1]ウンデカン骨格と思われる化合物が生成していることが明らかとなった。
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