1.ビニル型塩化物を用いた重水素化反応(基質適用範囲の検討):パラジウム-アレーン相互作用が生じうることに加えてかさ高い構造を有する配位子前駆体の適用が優れた触媒活性の発現に有効であることが明らかとなった。最適な配位子前駆体と反応条件を用いて基質適用範囲の検討を行った。置換基による立体障害や電子的な影響にも収率や選択性が左右されることが少なく、複素環類を含む高難度の基質や生物活性物質の主要骨格を含有する基質などに対して適用可能であった。
2.ビニル型ノナフラート対する脱酸素型重水素導入法の検討:アルケンに対する脱酸素型による重水素導入を開発するにあたり反応性に優れるノナフラートを用いて触媒系の検討を行った。その結果、ホスフィン系配位子とパラジウム錯体の組み合わせにおいて重水素導入が円滑に進行することを見いだした。一方、スルファメートを基質とする検討も計画したが、基質合成において良好な結果を得ることが難しく開発を断念した。
3.ビニル型ノナフラートを用いた重水素化反応(基質適用範囲の検討):優れた効果を示したホスフィン-パラジウム触媒系を用いて基質適用範囲の検討を行った。本手法においても、置換基による立体障害や電子的な影響により収率や選択性が低下するとはなく、複素環を含む基質や生物活性物質に由来する基質などに対しても優れた効率性で重水素を導入することが可能であった。また、医薬品の合成中間体を基質とした場合にも優れた選択性で目的とする重水素化体を得ることに成功した。
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