研究実績の概要 |
鈴木-宮浦反応に代表される、パラジウム(Pd)触媒を用いた有機ハロゲン化合物と有機求核試薬とのクロスカップリング反応は、医薬品中間体をはじめとする機能性材料の合成に使用されている。特に芳香族塩素化合物は他のハロゲン化合物と比較して安価に入手容易であるために、芳香環導入試薬として使用が望まれる。しかし、塩素の脱離性が低いため高活性触媒や配位子の開発研究が進められている。本申請研究では、配位子としての作用が期待されるジメチルアミノ基を官能基とする陰イオン交換樹脂[三菱ケミカル、DIAION WA30(以下WA30)]を担体とする固定化Pd触媒(Pd/WA30)を開発し、それを用いた芳香族塩素化合物の効率的鈴木-宮浦反応を確立した。 Pd/WA30は、WA30を酢酸パラジウムの酢酸エチル溶液に浸し、パラジウムイオンをWA30に吸着した後に、水中室温でヒドラジン処理することで調製した。Pd/WA30は、N,N-ジメチルアセタミド(DMA)中炭酸セシウム存在下、様々な芳香族塩素化合物とアリールボロン酸とのカップリング反応を効率よく触媒した。本反応は2-、3-および4-クロロピリジンや2-クロロキノリンなどのヘテロ芳香族塩素化合物のアリール化にも適用可能である。なお、ジメチルアミノ基を持たない、WA30と同様のポリスチレン系ポリマー担持型触媒では芳香族塩素化合物のクロスカップリングは効率よく進行しない。反応後に回収したPd/WA30の活性は低く再利用はできなかったが、反応液中に溶出Pd種は検出されなかったことから、生成物へのPdの混入は問題とならない。 芳香族塩素を用いた鈴木-宮浦反応をフロー条件に適用することは困難であったが、芳香族ヨウ素のフロー式溝呂木-Heck反応の開発に成功した。本反応ではクリーンな熱エネルギー源であるマイクロ波を熱源とすることに特徴がある。
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